食いしん坊のクローゼット
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034 波佐見焼のくらわんか椀
向田邦子さんのエッセイだったと思う。ちょっとしたおそうざいを盛りつけるのに便利なお椀があり、厚みのある、ぼてっとした姿かたちが気に入って、こつこつ集めている、というような話だった。そのお椀の名を「くらわんか椀」という。へんてこりんな名前だな、と思った。
車も電車もなかった江戸時代のこと。淀川を行き来する舟の客を相手に、簡単な料理や酒を売る「くらわんか舟」という商売があった。「くらわんかー」つまり、「食べませんか」と声をかけながら舟を近づけたことから、その名がついたという。
客が料理を買うと、揺れる舟の上でも安定し、少しくらい雑に扱っても割れにくい、どっしりとした器に盛られて渡された。それが、くらわんか椀である。食べ終えた椀を返し、その数で勘定をしたともいう。今の回転寿司のお皿のような仕組みだったと思うと、おもしろい。
くらわんか椀には、長崎の波佐見で焼かれたものが多い。江戸時代に庶民の日用品としてたくさん作られたため、今でも古いものが残っている。白い地に青い染付。五弁花と呼ばれる花の模様や、草花、唐草などが、おおらかに描かれている。手に持つと、ずっしりと重い。
もともとは高価な器ではない。毎日の暮らしのなかで使われた、いわゆる雑器である。けれども、その気取りのなさがいい。厚みがあり、少しいびつで、絵付けにも愛嬌がある。骨董市などで見つけると、一つ、また一つと買うようになった。きんぴらごぼうや煮物を盛るには、これくらいがちょうどいい。気負わず使えて食卓にもなじむ。

食いしん坊のクローゼット
001 三時のおやつに菊皿
002 アスティエの角皿
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿
004 1930年代のカフェオレボウル
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
019 欅の千筋茶碗
020 パリの買い物
021 アラビアのライス
022 沖縄の「やちむん」
023 ハルデンワンガーのセラミック皿
024 ベニントンポタリーのマグカップ
025 ウォルター・ボッセの「青いクマさん」
026「オドー・コペンハーゲン」のティーポット
027 百田輝さんの土鍋
028 アンニッキ・ホヴィサーリの飴釉プレート
029 小鹿田焼の大湯呑
030 蚤の市で出会ったチークボウル
031 ピーター・アイビーのワイングラス
032 パリで見つけたテレフォンワイヤーバスケット
033 わたなべ木工のパン皿
034 波佐見焼のくらわんか椀