午後3時。今日の仕事をそれなりに終えて、コーヒーを飲みながら本でも読もうとコートのポケットに財布と本を突っ込んで外へ出る。いつもの緑道を歩きながらマフラーを巻き直す。喫茶店は家から歩いて15分ほど。その並びにある雑居ビルの一階に民芸店のような古道具屋のような佇まいの店が新たにオープンしていた。長らく改修工事をしていたので何ができるのか少し気になっていた。OPENの札がかかっていたので、薄緑のガラスが数箇所はめ込まれた少し重い木のドアを開ける。からんころんと気持ちの良いドアベルが鳴った。「こんにちは」と挨拶をして、店内に入ったもののそこには誰の姿もなく、返事もなかった。少し外にでも出ているのかな...