「今日もていねいに。」
食いしん坊のクローゼット
エッセイスト
松浦弥太郎
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027 百田輝さんの土鍋
土鍋で炊くご飯のおいしさくらい贅沢なものはない。炊きたてのぴかぴかした見た目だけでなく、そのなんともいえない香りと、ひとくち噛んだときのお米のほどよい甘さに言葉を失ってしまう。ひとつも飽きることがないおいしさというのはこういうものだと独りごちる自分がいる。二十年ほど付き合いのある、日本料理店の締めでいただくご飯がそれだ。炊きたてのいちばんおいしい瞬間に食べていただきたいから、秒単位の計算でお米を炊くのだとご主人は言う。「さあ、炊けました」と目の前で土鍋のふたを開けてくれるときの嬉しそうな顔。
ある日、いつものように店に行くと、「よかったら、こちらを使っていただけませんか?」と渡されたのが、陶芸家の百田輝さんの土鍋だ。店で使うためにいくつか試作してもらったもののひとつだという。織部を思わせる釉薬がたっぷりとかかり、いくつもの丸が模様になったモダンさがとてもすてき。2合のお米を炊くのにちょうどよく、またちょっとした鍋料理にも使えるサイズ感もいい。この土鍋でお米を炊くと、びっくりするくらいにおいしいご飯ができあがる。家でもふたを開ける楽しみを味わっている。毎回「わあ!」と歓声を上げ、拍手喝采。

食いしん坊のクローゼット
001 三時のおやつに菊皿
002 アスティエの角皿
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿
004 1930年代のカフェオレボウル
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
019 欅の千筋茶碗
020 パリの買い物
021 アラビアのライス
022 沖縄の「やちむん」
023 ハルデンワンガーのセラミック皿
024 ベニントンポタリーのマグカップ
025 ウォルター・ボッセの「青いクマさん」
026「オドー・コペンハーゲン」のティーポット
連載
「今日もていねいに。」の扉
エッセイスト
松浦弥太郎
少しちからをぬき、キホンを大切にする松浦弥太郎さんと、彼ならではの素をつくる、くらしと食事。