食いしん坊のクローゼット
松浦弥太郎 | 今日もていねいに。

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029 小鹿田焼の大湯呑

一子相伝で技法が守られている、大分県日田市の民陶、小鹿田焼。そこの伝説的な名工、坂本茂木さんとは、鎌倉・もやい工藝の久野恵一さんを通じ、一度だけお会いした。坂本氏がちょうど引退する直前だった。久野さんは坂本氏が書く字がとても好きだと言い、陶板の表札を氏に作らせて、そこに名前を書かせることを思いついた。なんと小鹿田焼の表札である。久野さんはこんなふうに新しいアイデアを思いついては、坂本氏の手仕事を止めないように注文を続けた。ちなみに表札作りは、我が家用に「松浦」を書いてもらったが一度で終わった。
寿司屋で使われるような大きな湯呑を、坂本氏に作らせたのも久野さんの思いつきだった。後に名作と言われるようになった小鹿田焼の大湯呑である。
ある日、何がきっかけだったか忘れたが、久野さんから「これはあなたが持っていなければいけないものだから」と渡されたのが、そんないわくがある大湯呑だ。とにかく大きいのだが、手に持つとしっくりと収まって心地いい。勢いよく細かく入った、飛びかんなが実に美しい。手にした日からぼくの宝ものになった。気に入って使っていたら口が欠けたので金継師の黒田雪子さんに金継ぎをしてもらった。この大湯呑で飲むお茶がいちばんおいしい。

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001 三時のおやつに菊皿      
002 アスティエの角皿        
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿 
004 1930年代のカフェオレボウル    
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
019 欅の千筋茶碗
020 パリの買い物
021 アラビアのライス
022 沖縄の「やちむん」
023 ハルデンワンガーのセラミック皿
024 ベニントンポタリーのマグカップ
025 ウォルター・ボッセの「青いクマさん」
026「オドー・コペンハーゲン」のティーポット
027 百田輝さんの土鍋
028 アンニッキ・ホヴィサーリの飴釉プレート
029 小鹿田焼の大湯呑

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