009 安南焼の茶碗
とっておきの服があるように、とっておきの器がある。僕にとってそれは安南焼の茶碗だ。安南焼とは、江戸時代にベトナム(安南)から渡来した焼き物で、素朴な染め付けに味わいがあり、茶器として珍重されたことで知られている。手に持つとずっしりする。肌さわりがあったかい。図柄がたのしい。いつもおそうざいといった小さなおかずを品よく盛っては、そのたびに「いいなあ」と笑みが浮かべている。うちに来て、この茶碗を使った人はみんな欲しがる。着ている服を褒められたようでほんとうに嬉しい。今日は赤パプリカのマリネを盛った。