食いしん坊のクローゼット
松浦弥太郎 | 今日もていねいに。

食いしん坊のクローゼット

030 蚤の市で出会ったチークボウル

自分の暮らしを見渡すと、これはあそこ、あれはここ、というように、いつかの旅先で出会ったものばかりで、ああ、そうだったと手に取ると、遠い彼の地の記憶がよみがえってくる。パリのクリニャンクールはよく知られたアンティークの蚤の市だけど、そのエリアの端っこのほうを歩いていたら、若い女性が一人で店番をするとてもセンスの良い店があった。古いものをごちゃごちゃと置いてあるというよりも、よく吟味されたものが、白い清潔な壁の棚にぽつりぽつりと置いてあって、単に古いものというよりも、その置き方によってどれもがオブジェのように美しく見えた。まず目に入ったのは、ジャン・コクトーの「恐るべき子どもたち」のペーパーバックで、著者による表紙の絵が気に入って購入した。とても安かった。その横にチーク材の小さなボウルが4つ重ねて置いてあって、その姿かたちが彫刻のようでいいなと思ったが、その日は買わずに帰った。

家に帰ると、どうしてもあのチーク材のボウルが気になって仕方がなかった。お店にあったように、家の棚に4つ重ねて飾ったらきっとすてきだなと思った。次の週、もう一度店を訪れると、売れずにまだあって、ほっとした。店の女性はぼくのことを覚えていてくれて、「あなたはきっとまた来ると思っていました」と言って笑った。

食いしん坊のクローゼット

001 三時のおやつに菊皿      
002 アスティエの角皿        
003 リーサ・ハッラマーのデザート皿 
004 1930年代のカフェオレボウル    
005 「if」のピューター皿
006 白磁の茶椀
007 木の平皿
008 ブルーウィローの皿
009 安南焼の茶碗
010 成田理俊のステンレス皿
011 サーラ・ホペアのコップ
012 仲村旨和のカッティングボード
013 レモンの木の小皿
014 マルック・コソネンのバスケット
015 スティーブ・ハリソンの皿
016 鳥獣戯画の盛鉢
017 ラッセル・ライトのカレー皿
018 木曽ひのき漆器の弁当箱
019 欅の千筋茶碗
020 パリの買い物
021 アラビアのライス
022 沖縄の「やちむん」
023 ハルデンワンガーのセラミック皿
024 ベニントンポタリーのマグカップ
025 ウォルター・ボッセの「青いクマさん」
026「オドー・コペンハーゲン」のティーポット
027 百田輝さんの土鍋
028 アンニッキ・ホヴィサーリの飴釉プレート
029 小鹿田焼の大湯呑
030 蚤の市で出会ったチークボウル

連載

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