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食いしん坊のクローゼット

今日もていねいに。の扉

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017 ラッセル・ライトのカレー皿

十代の終わりにアメリカを訪れ、サンフランシスコ、ニューヨークに暮らした。楽しみのひとつに週末のフリーマーケット巡りがあった。買う買わないはどうでもよく、多種多様なアンティークやガラクタを見るのが楽しかった。その頃、よく見かけたのが、シンプルなデザインにうつくしい色合いのラッセル・ライトというテーブルウェアがあった。1950年代、食事をするテーブルを暮らしの中心に置くというインテリア提案をしたデザイナーのラッセル・ライト。華美ではなく、極めてシンプルを追求したその哲学を知り、当時は安価だったので一枚一枚集めていった。カラーバリエーションは多かったが、ぼく薄いグレーが好きで、よく手に取るようになった。いつしか、ぼくのグレーコレクションはほぼフルセットとなった。しかし日本に帰国後、生活に苦しくなり、コレクションすべてを手離した。けれども、どうしても手離したくなかったのがグレーのカレー皿だ。これはお金の無い頃にがんばって最初に買った一枚だった。カレーとごはんを分ける、ふわっとした有機的な曲線がとても気に入っていて、今でも日常的に愛用している一枚だ。カレーもいいけれど、今日はパンケーキと目玉焼き、焼いたソーセージを盛り付けて食べた。もう40年も使っている。

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