010 成田理俊のステンレス皿
鍛造作家・成田理俊さんとの出会いは偶然だった。休日の散歩途中、ふと古い雑居ビルに一室にあるギャラリーに立ち寄ると、そこで彼は東京で初めての個展を行っていた。もう15年くらい前のことだ。鉄を鍛造して作った小さなフックや燭台がとてもすてきだった。手のひらに乗るくらいの大きさで、フライパンの形をした燭台を買った。それから数年後、彼は実用的な鉄のフライパンを作るようになり、そのていねいな手仕事が認められるようになった。そんな彼のいつかの個展で出会ったステンレス皿がある。「ステンレスの皿はむつかしくてなかなか作れませんが、とてもきれいなんです」と成田さんは照れるように言った。それからずっと、もっぱらサラダ皿として重宝している。無骨に見えるが、料理を盛るととても美しい。夏のビーチコーミングで集めた石を置いてみると、また違った表情を見せて、なんというか、成田さんのやさしい人柄が表れた、とてもいい作品のひとつだと思っている。