BOOKSHOP TRAVELLER(東京)
東京都祖師ヶ谷にある「BOOKSHOP TRAVELLER」の和氣さんに、この季節におすすめしたい本やその一文など、日々の過ごし方のヒントにつながる話をうかがいました。
──── BOOKSHOP TRAVELLER
東京都祖師ヶ谷にある「BOOKSHOP TRAVELLER」は、独立書店を応援する活動「BOOKSHOP LOVER」主宰の和氣正幸さんが営む、「本屋のアンテナショップ+新刊書店」です。全国の実店舗のある本屋に加え、イベント出店やZINE、出版社、ブックカバー作家など、本に関わるさまざまなつくり手が棚をつくり、ここでの出会いをきっかけに各地の本屋へ足を運んでもらうことを目指しています。本屋をめぐる楽しさを、そのまま店のかたちにしたような一軒です。

季節のおすすめ by 店主・和氣さん
この季節におすすめしたい本
『レインコートを着た犬』 著:吉田篤宏(中央公論新社)
吉田篤宏さんの作品は、読むといつも心が静かになります。ありきたりの日常に少しの不思議。見方を変えればいつもの暮らしにもファンタジーはあるんだと思い起こさせてくれる。本作は有名な『つむじ風食堂の夜』を一作目とした「月舟町」シリーズ三部作の完結編。タイトルが梅雨にぴったりなので選びました。

好きな一文
屋台とか古本屋っていうのは世の中のどんづまりにある最後の楽園みたいなもんでさ、そういうところへ辿り着いた連中が、全員、マケイヌであっても俺はまったく構わない
世の中の本やSNSは成功譚やそのノウハウで溢れていますがそこには優しさが不足していると思うことが多くあります。成功しようとして失敗してしまったときのことはそういう本には書かれていない。書いてあったとしてもどうやって乗り切ったとか誰かの支えがあったとかそんなことばかり。ですが、そんな表には出せないどうしようもないときだって必ず人生にはあるわけで。こういうセリフを吐ける人がいるからこそそれでもやっていこうと思えるのだと僕は思うのです。(直接は関係ないですがアニメ『カウボーイ・ビバップ』に出てくる「LOSER BAR」のことを思い出します)
この一文は、疲れ切ってどうしようもなく気分が晴れないとき、というよりも、疲れているのに仕事ができてしまう。頑張りすぎてしまっているときに思い出します。
仕事の息抜きのカフェや、眠る前に読むのもおすすめです。
──── オイシサノトビラでは、食べものの味そのものだけでなく、それを囲む時間や空気、そこで生まれる記憶まで含めて「オイシサ」と考えています。本の中で描かれている「オイシサ」で和氣さんが好きな本を教えてください。
オイシサが描かれている本
『チキンライスと旅の空』著:池波正太郎(中公文庫)
幼少期に親に連れられて行った炉端焼きの店で食べたほっけをなぜか思い出します。 そうして、居酒屋に行って気軽な肴を食べ、日本酒を飲みたくなります。(小鍋だてをしたことはないのですが……)オイシサを感じる描写を紹介しますね。
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小鍋だてのよいところは、何でも簡単に、手ぎわよく、おいしく食べられることだ。そのかわり、食べるほうは一人か二人。三人となると、もはや気忙(きぜわ)しい。
鶏肉の細切(こまぎ)れと焼豆腐とタマネギを、マギーの固形スープを溶かした小鍋の中で煮て、白コショウを振って食べるのもよい。
刺身にした後の鯛や白身の魚を強火で軽く焼き、豆腐やミツバと煮るのもよい。
貝柱(ハシラ)でやるときは、ちりれんげで掬(すく)ったハシラを、ちりれんげごと小鍋の中へ入れて煮る。こうすれば引きあげるときもばらばらにならない。
これへ柚子をしぼって、酒をのむのは、こたえられない。
むろん、牡蠣(かき)もよい。
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──── さいごに、和氣さんらしい「オイシサ」について教えてください。
元気がなくなったときに食べるジャガイモ・にんじん・タマネギ・鶏もも肉・ニンニクを濃いめの味噌で煮込むスープに柚子七味をかけて食べることですね。困ったときにこそいつもの雑な、でも手作りのメニューで力を取り戻すんです。ちゃんとした暮らし、ではなく、こういったラフだけども温もりのあるところに自分らしさがあるように思います。
BOOKSHOP TRAVELLER
東京都世田谷区祖師谷1丁目9−14
営業時間:12:00~19:00
定休日:火曜・水曜
Instagram:@bookshop_traveller
本屋のススメ
twililight(東京)
本屋であり、ギャラリーであり、カフェでもある、文化をゆるやかにつなぐ場所。新刊書店だけでなく、古本やレコード、シャツや靴下、オリジナル商品も扱っています。出版やイベント、選書の仕事も手がけ、ここを訪れると、本を選ぶ時間に加えて、誰かの感覚やまなざしに触れる楽しさがあります。
BOOKSHOP TRAVELLER(東京)
独立書店を応援する活動「BOOKSHOP LOVER」主宰の和氣正幸さんが営む、「本屋のアンテナショップ+新刊書店」です。全国の実店舗のある本屋に加え、イベント出店やZINE、出版社、ブックカバー作家など、本に関わるさまざまなつくり手が棚をつくり、ここでの出会いをきっかけに各地の本屋へ足を運んでもらうことを目指しています。
BREAD & ROSES(千葉)
本を売るだけでなく、読む人の気持ちに寄り添う姿勢がはっきりした本屋です。店名には、Bread(パン=生きる糧)とRoses(バラ=誇りや尊厳)という意味が込められ、「人が生きていくうえで必要な本」を扱うという思いが示されています。
BOOKS&FARM ちいさな庭(岐阜)
本と農作物をあつかう小さな店です。農園では農薬や化学肥料、除草剤を使わずに育てた作物を並べ、本と食がゆるやかにつながる場をつくっています。本を選ぶ楽しさと、土のある暮らしの気配が同じ場所にあるのが、この店の魅力です。
栞日(長野)
独立出版を中心に扱う新刊書店であり、喫茶や展示室も併設した、本との時間をゆっくり味わえる場所です。売れ筋だけに寄らず、書き手の思いや考えが託された本を選び、読み手へ手渡すことを大切にしているのが特徴です。
恵文社一乗寺店(京都)
本を買うためだけでなく、本と過ごす時間そのものを楽しめる本屋。棚には、店のまなざしで選ばれた本が並び、文学や暮らし、絵本、雑貨まで、ページの向こうにある日常の気配がゆるやかにつながっています。目的の一冊を探すだけではなく、思いがけない本との出会いがあるのも魅力のひとつです。
ホホホ座浄土寺店(京都)
銀閣寺や法然院、哲学の道からほど近い静かな住宅街にある本屋です。1階には新刊書、斜め前の浄土寺センターには古書が並び、雑貨は作家ものを中心に、陶器や文房具、衣類まで幅広く扱っています。
本のすみか(大阪)
本を買う場所というより、自分の感覚で本と出会い直せる場所です。新刊、古本、ZINEが並び、気負わず手に取れる一方で、店主の選書にはまなざしの確かさがあります。普段は本をあまり読まない人にも開かれていて、「読んでみたい」と思わせる入口があるのも魅力です。
本屋ルヌガンガ(香川)
棚を見渡しやすい空間を生かして、思いがけない本を手に取るきっかけをつくってくれる本屋。読書会やトークイベントも開かれ、本を買うだけでなく、本を通じて人や考え方に触れられるのも魅力です。
本のあるところ ajiro(福岡)
海外文学や詩歌を中心に、本好きが集まる場としてつくられた書店兼カフェです。運営は福岡の出版社・書肆侃侃房で、店内には自社書籍のほか、一般の書店ではあまり見かけない本も並びます。トークショーや読書会、歌会などのイベントも開かれており、本を買うだけでなく、言葉にひたる時間を過ごせるのが魅力です。
MINOU BOOKS(福岡)
耳納連山の麓・うきは市で始まり、いまは久留米にも店を構える、本屋とカフェのある書店です。衣食住にまつわる本からアートブックまで、「暮らしの本屋」をテーマに、日々の生活に少し彩りを添える一冊を選んでいるのが魅力です。