twililight(東京)
東京都世田谷区は三軒茶屋にある「twililight」の店主・熊谷さんに、この季節におすすめしたい本やその一文など、日々の過ごし方のヒントにつながる話をうかがいました。
──── twililight
東京都世田谷区三軒茶屋にある「twililight」は、本屋であり、ギャラリーであり、カフェでもある、文化をゆるやかにつなぐ場所。新刊書店だけでなく、古本やレコード、シャツや靴下、オリジナル商品も扱っています。出版やイベント、選書の仕事も手がけ、ここを訪れると、本を選ぶ時間に加えて、誰かの感覚やまなざしに触れる楽しさがあります。屋上でぼんやり過ごすような、肩の力が抜ける時間まで含めて魅力があります。

季節のおすすめ by 店主・熊谷さん
この季節におすすめしたい本
『インディアナ、インディアナ』著:レアード・ハント(twililight)

切れ切れの回想や手紙など、断片的な美しい文章が窓に当たる水滴のようで、陽が落ちて外が暗くなった時、ふと窓に映ったわたしが涙を流していたり、主人公のノアのようにわたしも哀しかったんだと気づいたりします。晴れの日は外からの刺激を浴びて、雨の日はとことん内省的になって、哀しみに耽る時間も必要なのだと感じさせてくれます。
好きな一文
好きな文章をあげることは難しくて、1ページ目から最終ページまですべて美しい文章なので、1つを挙げることはできません。
文章が断片的ではあるのですがそのすべて繋がっているとも言えます。それは一人の人間の中身がそうだからで。流れている時間、思い出す時間。時系列よりも常に哀しみが最優先であることが伝わってくることが切実に美しいと思います。自分の中にある哀しみに気づくことができて嬉しい。きっと、哀しみを乗り越えなくていいと知ることができます。
もしかしたら外の天気より自分の心に雨が降っている時に読んでいただくのが合うかもしれません。窓辺で、夜の暗く美しい部分を眺められる時間帯がおすすめですね。
──── オイシサノトビラでは、食べものの味そのものだけでなく、それを囲む時間や空気、そこで生まれる記憶まで含めて「オイシサ」と考えています。本の中で描かれている「オイシサ」で熊谷さんが好きな本を教えてください。
拙著『思い出せるなら』(twililight)が、好きな本というよりこの「オイシサ」に当てはまると思いました。食べることは、栄養摂取のためだけにあるのではなく、その場を満たす音や光、誰かとの語らいを味わうためにもあります。食べ物は食べたら消えてしまうけれど、思い出せるなら、その味は永遠に消えることなく、あなたは独りではないと教えてくれる。この本は、twililightと、同じ鈴木ビルの2階にあるカフェnicolasのメニューを、わたし自身の記憶に置き換えて紹介するメニューブックです。
たとえば、「抹茶と小夏のアイスサンド」は、目覚めた一瞬、ここがどこだかわからなかった。こぼれる光の先に、肌。そうだった。初めて、時間のことなんて気にせず過ごした夜。口を開く永遠に二人夢中になって飛び込んだ。あなたの目が開く。おはようが、別れの言葉になることに気づく。そんな味。
『思い出せるなら』熊谷充紘 / 絵:ささきめぐみ

──── さいごに、熊谷さんらしい「オイシサ」について教えてください。
自分らしさというものは考えたことがありません。美味しさというのは、たとえひとりで食べていても、ひとりではないと感じられるものだと思います。美味しいと感じられて嬉しい。そこにはきっと感謝の気持ちが含まれていると思います。ここまで生きてこられたこと、育ててもらったこと、支えてもらったこと、美味しい料理を作ってもらったこと、美味しい食材を作ってもらったこと、わたしがこの世界の一員であると感じられること。それが美味しさだと思います。
twililight
東京都世田谷区太子堂4-28-10鈴木ビル3F
営業時間:12時〜21時
定休日 :火曜日、第1&第3水曜日
Instagram:@twililight_
本屋のススメ
twililight(東京)
本屋であり、ギャラリーであり、カフェでもある、文化をゆるやかにつなぐ場所。新刊書店だけでなく、古本やレコード、シャツや靴下、オリジナル商品も扱っています。出版やイベント、選書の仕事も手がけ、ここを訪れると、本を選ぶ時間に加えて、誰かの感覚やまなざしに触れる楽しさがあります。
BOOKSHOP TRAVELLER(東京)
独立書店を応援する活動「BOOKSHOP LOVER」主宰の和氣正幸さんが営む、「本屋のアンテナショップ+新刊書店」です。全国の実店舗のある本屋に加え、イベント出店やZINE、出版社、ブックカバー作家など、本に関わるさまざまなつくり手が棚をつくり、ここでの出会いをきっかけに各地の本屋へ足を運んでもらうことを目指しています。
BREAD & ROSES(千葉)
本を売るだけでなく、読む人の気持ちに寄り添う姿勢がはっきりした本屋です。店名には、Bread(パン=生きる糧)とRoses(バラ=誇りや尊厳)という意味が込められ、「人が生きていくうえで必要な本」を扱うという思いが示されています。
BOOKS&FARM ちいさな庭(岐阜)
本と農作物をあつかう小さな店です。農園では農薬や化学肥料、除草剤を使わずに育てた作物を並べ、本と食がゆるやかにつながる場をつくっています。本を選ぶ楽しさと、土のある暮らしの気配が同じ場所にあるのが、この店の魅力です。
栞日(長野)
独立出版を中心に扱う新刊書店であり、喫茶や展示室も併設した、本との時間をゆっくり味わえる場所です。売れ筋だけに寄らず、書き手の思いや考えが託された本を選び、読み手へ手渡すことを大切にしているのが特徴です。
恵文社一乗寺店(京都)
本を買うためだけでなく、本と過ごす時間そのものを楽しめる本屋。棚には、店のまなざしで選ばれた本が並び、文学や暮らし、絵本、雑貨まで、ページの向こうにある日常の気配がゆるやかにつながっています。目的の一冊を探すだけではなく、思いがけない本との出会いがあるのも魅力のひとつです。
ホホホ座浄土寺店(京都)
銀閣寺や法然院、哲学の道からほど近い静かな住宅街にある本屋です。1階には新刊書、斜め前の浄土寺センターには古書が並び、雑貨は作家ものを中心に、陶器や文房具、衣類まで幅広く扱っています。
本のすみか(大阪)
本を買う場所というより、自分の感覚で本と出会い直せる場所です。新刊、古本、ZINEが並び、気負わず手に取れる一方で、店主の選書にはまなざしの確かさがあります。普段は本をあまり読まない人にも開かれていて、「読んでみたい」と思わせる入口があるのも魅力です。
本屋ルヌガンガ(香川)
棚を見渡しやすい空間を生かして、思いがけない本を手に取るきっかけをつくってくれる本屋。読書会やトークイベントも開かれ、本を買うだけでなく、本を通じて人や考え方に触れられるのも魅力です。
本のあるところ ajiro(福岡)
海外文学や詩歌を中心に、本好きが集まる場としてつくられた書店兼カフェです。運営は福岡の出版社・書肆侃侃房で、店内には自社書籍のほか、一般の書店ではあまり見かけない本も並びます。トークショーや読書会、歌会などのイベントも開かれており、本を買うだけでなく、言葉にひたる時間を過ごせるのが魅力です。
MINOU BOOKS(福岡)
耳納連山の麓・うきは市で始まり、いまは久留米にも店を構える、本屋とカフェのある書店です。衣食住にまつわる本からアートブックまで、「暮らしの本屋」をテーマに、日々の生活に少し彩りを添える一冊を選んでいるのが魅力です。