本のあるところ ajiro(福岡)
本屋のススメ

本のあるところ ajiro(福岡)

福岡・天神にある「本のあるところ ajiro」の善養寺さんに、この季節におすすめしたい本やその一文など、日々の過ごし方のヒントにつながる話をうかがいました。

──── 本のあるところ ajiro
福岡・天神の路地にある「本のあるところ ajiro」は、海外文学や詩歌を中心に、本好きが集まる場としてつくられた書店兼カフェです。運営は福岡の出版社・書肆侃侃房で、店内には自社書籍のほか、一般の書店ではあまり見かけない本も並びます。トークショーや読書会、歌会などのイベントも開かれており、本を買うだけでなく、言葉にひたる時間を過ごせるのが魅力。天神の街なかにありながら、静かに本と向き合える場所です。


季節のおすすめ by 善養寺さん

この季節におすすめしたい本
『詩と散策』 著:ハン・ジョンウォン 訳:橋本智保(書肆侃侃房)

全体を通して冬にまつわるエッセイが多いのですが、多湿な日本の暑気にはこうしたからりとした冷たい季節のことを思い出したくなります。

好きな一文
「だから、本当の気持ちや誓いは曇りの日に伝えたほうがいいと思う。陽ざしは愛おしいけれど、雲と雨は信頼できる。」(p.112)

この一文が好きな理由は、曇りや雨を好きだと率直には言えない複雑な気持ちが、信頼だったのだなと教えてくれたからです。雨の日、バスに乗っているときに思い出したりしますね。
早朝にひんやりした床に座りながら読むのがおすすめです。でも読み終えたあとは、ますます暑い季節が嫌になるかもしれませんね。

──── オイシサノトビラでは、食べものの味そのものだけでなく、それを囲む時間や空気、そこで生まれる記憶まで含めて「オイシサ」と考えています。本の中で描かれている「オイシサ」で善養寺さんが好きな本を教えてください。

オイシサが描かれている本
『陰影礼讃』著:谷崎潤一郎 写真:大川裕弘(パイ インターナショナル)

『陰影礼讃』の中で、羊羹の色を「瞑想的」だとほめるところ。「人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。」という描写を読んで思わずとらやの羊羹を買いに行った思い出があります。

──── さいごに、善養寺さんらしい「オイシサ」について教えてください。

母との食事を思い出す「夏の昼下がり、薬味をたくさん用意したそうめん」ですね。
私と母は二人とも食が細く、暑い盛りには余計に食欲が湧かない。健康の為に、もう少し食べようとお互いに励まし合うくらいでした。そのようなふたりでも、やはりそうめんなら簡単に食べることが出来るので重宝していました。夏場はそうめんのために薬味を常から切らさないようにしていて、野菜室には梅、大葉、茗荷、生姜が揃っている。ふたりとも(痩せている人の特徴であるような気もするけれど)薬味が大好きなので、器から溢れんばかりにたっぷりと盛り付けて、どちらが主役か分からないような状態で食べるのが毎夏の定番だったんです。

本のあるところ ajiro
福岡市中央区天神3-6-8 天神ミツヤマビル1-B
営業時間:水・木・金(15-20時)、土・日・月(13-19時)
定休日:火曜
Instagram:@ajirobooks

連載

おいしさってなんだろう?をテーマに
その人らしい"おいしさ"をもつ
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