佐津川愛美|俳優
もし「いま会いたい人は?」と聞かれたら誰を浮かべますか。
ほとんどのことをスマホで完結できる時代ですが、時間をかけて出かけたり、会ったりするからこそ生まれる会話や思い出があるのではないでしょうか。効率が求められがちな今だからこそ、あえて非効率にしてみる。そこには、心の豊かさがあるのかもしれません。
今回は「いま、会いたい人」をテーマにお届けします。
映画やテレビドラマ、舞台など幅広く活躍する俳優・佐津川愛美さん。俳優としてだけでなく、自らプロジェクトを立ち上げ、イベントやワークショップの企画・プロデュースにも取り組んでいます。今回は佐津川さんに、「いま会いたい人」について聞きました。
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佐津川愛美(さつかわ あいみ) 俳優 1988年8月20日生まれ 静岡県静岡市出身。
2005年、映画「蝉しぐれ」で映画デビュー。第48回ブルーリボン賞助演女優賞にノミネート。その後は映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)で第50回ブルーリボン賞の助演女優賞と新人賞の2部門にノミネート。以降、様々なドラマや映画で活躍。
自身が代表を務めるプロジェクト<映画と仲間「filty」>を立ち上げトークイベントや子ども向け映画撮影ワークショップなどを企画・プロデュースしている。
エッセイ集『今日も、自分を生きる練習』(幻冬舎)が発売中。
現在は「おちたらおわり」(中京テレビ・日本テレビ)に出演中
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オイシサノトビラ
佐津川さんが「いま会いたい人」はどなたでしょうか? 会いたいと思った理由もあわせて教えていただきたいです。
佐津川さん
私が会いたいのは、長崎・五島列島で出会った松本くんと、あずです。二人とは、数年前の夏、友人に勧められるがまま向かった福江空港で初めて会いました。もともとは友人の友人でしたが、今では「五島に行きたい」と思ったとき、真っ先に顔が浮かぶ人たちです。
五島で過ごした時間は、海で遊んで、みんなでごはんを食べて、たくさん笑った、楽しい夏の思い出です。あまりに五島が好きになって、その年の冬にも、またみんなに会いに行ったくらいです。今でも夏になると、また五島の海に行きたいなと思います。
オイシサノトビラ
お二人との出会いや、五島で過ごした時間について教えていただいてもよろしいでしょうか。
佐津川さん
「愛ちゃん! 病んだときは五島だよ!」。久しぶりに連絡をとった友人から、突然そう言われました。「最近どう?」から始まったやりとりの中で、どうやら私は何かに疲れていたようです。勧められるがまま、すぐに五島列島へ向かいました。
「松本くんが迎えに行くから!」。それだけの情報で五島に降り立つと、松本くんは、あずと一緒に車で迎えに来てくれました。「はじめまして」と挨拶をして、そのまま車に乗り込みました。
運転席には松本くん、助手席にはあず。「何も聞いていないんですけど、何がしたいとか、何を食べたいとかありますか?」と聞かれたので、「本当に何にもないです。なんか東京に疲れちゃって。そしたら、とりあえず五島に行きなさいって言ってもらって。勢いで来ちゃって」と答えました。すると松本くんは、「おっけー! それなら任せて! まずは海だね!」と、そのまま車を走らせてくれました。あずもすかさず、「海でヨガしよう!」と。
初めて会ってから30分後には、三人で海辺に寝転がって、海を感じていました。その時点で、もう心はゆるんでいました。
五島で過ごした夏の時間
その年の冬にも、福岡での仕事を終えた私は、そのまま船に乗って、またみんなに会いに行きました。夜に出発して朝に到着する便は、朝日がとてもきれいだと聞いて、見てみたかったんです。
五島へ向かう船上から見た朝日
そのときも、みんなは変わらずあたたかく歓迎してくれました。そして、初めてのイカ釣りへ。「イカ名人に連れて行ってもらえば絶対に釣れる!」という話だったのに、私は釣れませんでした。名人の「必ず釣らせる」という記録を、私が途絶えさせてしまったかも……。
結局イカは釣れず、みんなが爆笑している中、お店で食べたイカのおいしさは、今でも忘れられません。甘い九州醤油に柚子胡椒をつけて食べる、私にとっては初めての食べ方でした。これが本当においしかった。今でも「あのイカ、また食べたいな」と思います。
五島での思い出には、私を元気づけてくれた恩人の松本くんとあずがいて、五島のみんながいて、おいしいものがあって、みんなで笑っていた時間があります。
甘い九州醤油に柚子胡椒をつけて食べたイカ
オイシサノトビラ
わたしたちは、味や栄養、見た目だけではなく、その人にとって大切な食事こそ「オイシサ」だと考えています。佐津川さんにとっての「オイシサ」とはどのようなものでしょうか。
佐津川さん
旅行が大好きで、その土地ならではの食べ物を味わうことも好きです。
でもそれと同じくらい、自分のために時間をつくって、食べたいものをわざわざ食べに行くことや、みんなで食卓を囲んで話して、笑って、「おいしいね」と言い合う時間も好きです。食事を通して、楽しい気持ちを誰かと一緒に共有できる。そんなごはんの時間が、私にとって大切です。
振り返ってみると、忘れられない味には、そのとき一緒にいた人や、その場所の景色、その日の出来事まで紐づいています。五島で食べたものを今でも「また食べたい」と思うのも、味だけではなく、あのときの楽しい時間ごと覚えているからなのかもしれません。
何を食べるかだけではなく、どこで、どんな時間を過ごしながら食べるのか。その全部をひっくるめて、私にとっての「オイシサ」なのだと思います。
オイシサノトビラ
ふだんの生活につかれたとき、あえて何もしない時間をつくったり少し離れたりすることで自分を取り戻すことの大切さを知りました。佐津川さんが過ごした五島での穏やかな時間と大切な友人との思い出を聞かせていただき、ありがとうございました。
了
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