──── 前回の話に続いて、金沢旅行の話をお届けしていきます。金沢の今を、自身の目で見て感じたり、現地の人の話を聞きたいと考えていた在原さんは、お母さまと観光地をまわるだけでなく、もうひとつ行ってみたいと思っていた場所がありました。後編は、人との出会いについてお話をお届けします。
あるパン屋さんとの出会い
今回の旅行ではお母さまが行きたい場所に行った印象がありますが、ひとつだけ在原さんがどうしても行きたいパン屋があったと聞きました。どうしてそちらに行きたいと思ったのでしょうか。
「きっかけは、わたしの大好きなブランドさんUNDECORATED(アンデコレイテッド)での出会いです。そのブランドさんがポップアップイベントを開催した時に、石川県からNiOR(ニオール)というパン屋さんが出店していました。そのパンを食べたら、とてもおいしかったんです。それがずっと記憶に残っていて、石川県に行くことがあったらぜひ立ち寄りたいって思っていたんです」
「NiOR(ニオール)さんは、金沢市の隣、野々市市というところにあって。旅行中に行くことができればいいなと思っていました。ただ、営業時間が15時までということを現地に着いてから知って、急遽スケジュール変更をして行くことを決めました。店主の丹尾さんには、ポップアップイベントでご挨拶させてもらっていたので、お店に行く前に連絡をさせてもらいました、『これからうかがわせてもらいます』って。わたしとしては、母とふたりでお店を見ることができればいいかなと思っていたのですが・・・。お店に行くと本当にありがたいことに丹尾さんがわざわざ出迎えてくださって、お店について説明してくれました」
「お店に行くまでは、どんなパン屋さんなんだろうなって楽しみで。実際に行ってみると、これはパン屋さんなの?と思うような外観、インテリアへの強いこだわりを感じられる店内だったことにとても驚いたんです」
思考が追いつかないパン屋
在原さんはパン屋だけではなく、いろいろなお店に行くことが多いと思います。その中でもNiOR(ニオール)さんに惹かれた理由についてもう少し教えてください。
「たとえば、ある棚に置いてあったパンは、全部四角の形をしていました。棚の製図版を先に買って、それに合った四角形のパンを作ろうと思ったという話を教えてもらいました。インテリアからパンの発想をしているんだと知って、そこから店内についていろいろ聞いてしまいました。パン屋さんは、自分たちが作りたいパンを作っているだと思っていましたが、丹尾さんは違う。わたしのこれまでの『パン屋さんのイメージからはかけ離れていて、どういうこと?』とこれまでのわたしの概念では思考が追いつかないパン屋さんだったんです」
「丹尾さんからは『インテリアに合わせて、パンを作りたい』という想いをうかがって、もう、すごすぎるな。素晴らしすぎるな、と。お店について説明してくださる時間は、たぶんパンの話よりも、インテリアの話の方が多かったと思います。店内に飾ってある絵もとても綺麗で。ひとつひとつていねいに話をしてくださいました。こんなにインテリアやアートの話を聞くことができるパン屋さんはないなと思ったくらいです」
金沢での学び
パンを通して出会った丹尾さんとの再会やお話を通していろいろ学んだことがあったんですね。
「いろいろ話をしてくださった中でも、特に記憶に残っているのが金沢の人と人のつながりについての話です。金沢やその近辺で活動しているアーティストやアパレルの人たち、食関連の職人さんたちが、できるだけ連携していこうとしている姿勢をうかがって素敵だなと感じました。 同じ創り手同士、みんなで金沢を盛り上げていこうっていう想いをうかがって。領域を超えて一緒に何かやろうとされているところにとても共感を覚えました。丹尾さんのパンを取り扱っているスペイン料理のお店の方は、アパレルのお店も経営されているみたいで。創り手の多様性も感じることができました」
「丹尾さんにパンとインテリアはどちらがお好きなんですか?とうかがったら、『インテリアが好きで、それを自分として表現するのがたまたまパンでした』と打ち明けてくださって、発想が柔軟でステキだなと感じました」
わたしの素
「丹尾さんのお店、NiOR(ニオール)はパン屋だとは思えないようなパン以外の商品を扱われていて、とても魅力的なモノがたくさんありました。パンだけでなく、カトラリーやカレンダーを購入して、インテリアについて学ぶという、これまでになかった経験やインスピレーションを受けることができました」
「こんなパン屋さんは、初めて」と話すほど、新しい刺激を受けた人との出会い。在原さんのおいしい記憶がまたひとつ増えた時間でした。