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「また来ます」

「また来ます」

──── お休みの日の過ごし方、どのような過ごし方が自分らしい時間ですか。在原さんは、時々好きな場所へクルマでひとり旅をするそうです。ひとり旅に出かけたある一日の“未練たらたら”だった時間について話をしてくれました。


山梨に行かれたんですよね。在原さんはよく山梨に行っているイメージです。

「山梨は小さい頃から行く機会が多いんです。河口湖に家族で出かけたり、大人になってからも友人と行ったりします。程よく都心を忘れさせてくれて、旅行した感もある。山梨に入ったときにちょっと遠くに来たなっていう感覚になるんです。ひとりでも行きますよ。わたしはクルマの運転が好きなので、気分転換にもなります」

「好きなお店もいくつかあって。そのひとつのカフェが今回の話です。はじめて行ったのは、山梨の旅館に泊まった時においてあったドリップコーヒーがきっかけ。

カフェの名前を覚えていて、帰りに立ち寄ったんです。もう完全に私だけの秘密にしたいお気に入りのお店です」

コーヒーとかカフェは、前から話をしてくれているようにかなり好きですよね。いろいろなカフェに行く機会があると思うのですが、そのカフェを好きになったきっかけはあるんですか。

「コーヒーがおいしいのと、お菓子のラインナップが多いんです。いつものお気に入りのコレ!っていうのもいいけれど、今日はコレ、明日はコレ、みたいなその日の気分で食べたいものを選べる、お菓子の選択肢がたくさんあるお店って魅力的ですよね。毎回、今日行ったら何食べようかなとか。そう思えるカフェなので、山梨に行ったら立ち寄る場所のひとつになりました」

「先月行った時は、レモンのパウンドケーキとカフェラテを頼んだんです。でもその棚の下にあったクランベリーとくるみのクリームチーズのパウンドケーキが実は気になって。そっちにすればよかったかな…次行ったらそれを食べたいな…と思って帰ったんです。優柔不断というよりも、いろいろ食べたくなる気持ちにさせてくれるんです」

お休みを使って、山梨にそのパウンドケーキを食べに行ったんですか。

「そう。クランベリーとくるみのクリームチーズのパウンドケーキを頼みました。前回食べることができなかったからずっと頭の中に残っていて。今回食べたらやっぱりすごくおいしかった。注文した時に『アイスクリームつけられますが、どうしますか』って店員さんに聞かれて。でもなんとなく流れでいりませんって言ってしまったんです。アイスがなくてもおいしかったんですが、もしアイス付きだったらどんな味になっていたんだろうって…」

それは今回も心残り…ですね。

「はい。でも、くるみのパウンドケーキを購入する時に、隣にオレンジのパウンドケーキがあって、今食べたいのはオレンジのパウンドケーキなんだよなって思いながら、くるみのパウンドケーキを食べたんです。前から食べたかったのはくるみ。でも今はそれじゃないんだな、気分はオレンジのパウンドケーキなんだよな…と思うわたしもいて」

ということは、心残りはアイスだけじゃなくてオレンジのパウンドケーキも…。食べている時でも違う食べもののことを考えてしまうのが在原さんらしいなと思います。

「わたしはお昼ご飯を食べながら、夜ご飯に何食べようかなって、思うのが楽しいんですよね。お腹いっぱいのときに食事の話をするのは苦手っていう人もいると思うんですけど、わたしはそうではなくて。その日はひとりでふらっと出かけようと思って山梨に行ったんですけど、くるみのパウンドケーキと意気込む自分もいて。でも、いざ注文するとなるとオレンジのパウンドケーキもいいなと思う自分もいたんです」

心残りのカフェを後に、次はどこに行かれましたか。

「カフェの後にしばらく散歩して、ほうとう屋さんに入ったんです。ほうとう好きなんですよね。以前にネットで調べていたら、冷たいほうとうがある情報をを知って入ったんですけど、注文したら店員さんに『それは翌月からです…』と教えてもらって。
お店に入る前から気分は冷たいほうとうだったんですけど、無かったら仕方ないですよね。温かいほうとうも大好きなので、かぼちゃのほうとうを注文して、それはそれでやっぱりおいしくて、でも冷たいほうとうに心は惹かれていて。ああ食べたいなって…。そこでも次回食べたいものができてしまって」

「ほうとうのお店を出て、クルマまで戻ったんです。ただ、戻る途中にどうしてもオレンジのパウンドケーキが忘れられなくて。結局、もう一度カフェに『また来ました』って、行きました。

さっきはアメリカーノだったから二度目はカフェラテにして、数時間越しのオレンジのパウンドケーキをテイクアウトで買って。

さすがに店員さんには『ご旅行か何かですか?』聞かれました」

食べたいものを叶えた、休日の幸せな時間だったんですね。
自分らしい時間として紹介してくれた話には、まだ続きがありました…。

わたしの素

「でも、それだけじゃないんです…。お店で過ごして、もう一回戻ってきて、二回目の会計も終わってる。なのに、テイクアウトのオレンジのパウンドケーキを頼んだ時に目に入ってきたピーナッツのクッキーがどうしても気になってしまって。さらにピーナッツのクッキー…。さすがにそれはできないなと思って、『また来ます』と言ってお店を出ました」

「今回のことだけじゃなくて、山梨はわたしにいつも何かを残してくれるんです。いつもわたしが未練たらたらになってしまう時間をくれる場所。いい意味で満足させてくれない。出かけた自分が、満足できるかをいつも試されている感じなんです」

くいしん坊、在原さん、万歳。

人と時間の扉 アンバサダー

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