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いろいろな土地のおいしさとの出合い。

自然と、道具の扉

いろいろな土地のおいしさとの出合い。

ドラマや漫画で描かれる編集スタッフといえば、デスクに向かってパソコンをカタカタ打ち込んでいたり、「情報は足で稼げ」とばかりにさまざまな人のもとへ出向いたり、締め切りや校了のタイミングでは徹夜をして、オフィスの椅子を並べて仮眠を取ったり……、そんなイメージでしょうか?
働き方改革やデジタル化、テレワークの普及によって、編集という仕事も少しずつ変わってきているように感じますが、それでもまだハードな部分が多いのも事実です。
自分の仕事に対する向き合い方を考えると、遊びと仕事の境界が曖昧で、休みなくハードに働いているのか、それとも暇さえあれば無理して遊んでいるのか、よく分からない状態です。基本的には「仕事と称して遊んでいる」感覚なので、動き回ること自体は楽しいのですが、どんなに頑張っても1年は365日、週末は52回、1日は24時間しかありません。必然的に時間が足りなくなってしまいます。
効率よく動ければ、もっと時間を生み出せるのかもしれませんが、残念ながら自分は「効率的」とはほど遠いタイプです。記事を書いたり企画を考えたりするうえで、実際に自分の目で見ないと理解できないことが多いため、気になったことやものは必ず体験しに行く。その結果、さらに時間が足りなくなる、という悪循環に陥っています。
とはいえ、どこかへ出かけたり移動したりすることがまったく苦ではなく、むしろ楽しいと感じる性分なので、この仕事を続けられているのかもしれません。そして、出張の際に欠かせないのが「寝床」です。幸い、自分は電車、車、飛行機、カプセルホテル、テント……どんな環境でもぐっすり眠れる体質なので、この点では非常に助かっています。

もうひとつ欠かせないのが「食」です。どこへ行ってもお腹は空きます。美食家というわけではないので、特別に美味しいものを求めているわけではありませんが、せっかくならその土地ならではの、安くて美味しくて早い、そんな都合の良い食べ物を探してしまいます。ただ、食事を目的に動いているわけではないので、事前に下調べするようなマメなこともできず、大抵は現地に着いてから、その場しのぎで食べる場所を探すことになります。
そこで出会ったのが、駅ナカの立ち食いそば。駅構内にあるため移動効率が圧倒的に良く、さらに好立地ゆえに競争が激しく、人気がない店は生き残れないはず。結果として、駅ナカのそば屋にはハズレがない(竹下調べ)という結論に至りました。さらに、全国チェーン系の店舗が少なく、その土地ごとの特色が反映された店が多い点も魅力です。
特に、名古屋の新幹線ホームにある「きしめん」と、新大阪の「浪花そば」は、チェックしている人も多いのではないでしょうか? 自分もこの2店舗に関しては、お腹が空いていないときでも「せっかく来たから」とつい食べてしまいます。




ちなみに、駅ナカのそば屋の発祥は明治時代の軽井沢駅という説が有力なようです。そもそも「駅そば」という名前でスタートし、現在も「おぎのや」が変わらず軽井沢駅で営業を続けているようです。この事実、今回このコラムを書くにあたって調べていて発見したのですが、「おぎのや」といえば「峠の釜めし」のイメージが強く、これまで「駅そば」はノーマークでした。次に軽井沢へ行く際には、お腹を空かせて「駅そば」を堪能したいと思います。
結局、「食べることが目的ではない出張」と言いながらも、しっかり食べることを目的にしてしまっている自分がいます。

わたしの素

いろいろな土地へ行くと、時間があれば郷土料理的なものが食べたくなります。よく知られた名物メニューはもちろん、聞いたことのない食材や料理にも惹かれます。
昨年、岐阜県の中津川に2泊3日の撮影で訪れた際、少し余裕のあるスケジュールだったため、同行したライターさんが調べてくれたお店で食事をすることになりました。そこで、新しい郷土料理に出合うことができたのです。
事前情報では「鶏ちゃん焼き」という料理が食べられるとメールで知らされていただけだったので、「鶏ちゃん焼き」の読み方が「トリチャン」なのか「ケイチャン」なのかも分からず、一体どんな料理なのかも調べないままお店に到着しました。そこは完全に焼肉店。ということは、焼肉グリルや七輪で鶏肉を焼いて食べるのかな?と想像を膨らませながら席に着きました。
メニューの一番目立つ場所に「鶏ちゃん焼き」と書かれているのを見つけ、迷わず注文。すると、まず登場したのはガスコンロとジンギスカン鍋。想定外でした。
そのジンギスカン鍋にクッキングペーパーを敷き、ニンニク醤油風味に味付けされた鶏肉とキャベツを豪快に乗せて焼き上げる。シンプルな料理ですが、鉄鍋で少し焦げたタレの香り、鶏油を吸ったキャベツ、しっかりとした味わいの鶏肉——すべてが絶妙でした。ビールにもよく合い、クセになる味。思わず自宅で再現するためにジンギスカン鍋が欲しくなってしまいました。
でも、なぜ北海道のジンギスカン鍋が岐阜で鶏肉を焼くために使われるようになったのでしょうか? まだまだ知らないことばかりですね。
ちなみに、「鶏ちゃん焼き」の読み方は「ケイチャン」です。




 

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