雑誌編集者として、月刊で発売されているアウトドアファッション誌「GO OUT」をプロデュースし、年に2回ほどゴルフファッション誌「GOLF OUT」を制作しています。先日、その「GOLF OUT」に掲載するゴルフ旅行の取材でマレーシアのクアラルンプールに行ったのですが、ゴルフ旅行であることを忘れてしまうくらい、現地での食の豊かさが記憶に残っています。
出発前のマレーシアのイメージは、タイやインドネシア、シンガポールの近隣にあるアジアの国といった程度で、料理も人種も「いわゆるアジア」という印象でした。基本的な食事も「アジアのエスニック料理=少しスパイシー」だと思っていたのですが、実際に訪れると想像以上に多様なカルチャーや人種が入り混じっており、聞こえてくる言葉や見かける文字には英語が多いことから、まるでアメリカのアジアンタウンのようにも感じました。歴史的・地理的背景から多民族国家となっているマレーシアは、街中も多民族的な雰囲気で、多国籍な人々が暮らしているため、食事のクオリティも本国そのもの。どの国の料理も本格的で、本物の味が楽しめます。ふらっと入った中華料理店も絶品でした。
もちろんマレー料理も堪能しました。マレー料理には奥深さがあり、マレーシアの先住民であるマレー人は多くの部族に分かれていて、信仰している宗教や食べる料理も異なります。そんな多様な味がクアラルンプールに集結していて、日本に例えると、東京で沖縄料理を食べるようなものかもしれません。毎食、新しい発見があり、新しい文化に触れる楽しさを感じました。
ちなみに、マレーシアの人は「マレー人」で、料理は「マレー料理」と呼ばれます。それなら「インドネシアの人はインドネ人で、料理はインドネ料理?」と疑問に思い調べてみると、「シア」には「国」という意味が含まれており、インドネシアは「インド」「ネ」「シア」、つまり「インドの島々の国」という意味になるそうです。
話を戻すと、マレーシアで印象的だったもう一つがフルーツの種類の豊富さです。時期的なこともあったのか、街中ではドリアンを強く推していて、路上にはドリアンが山積みされ、夜にはドリアンのネオンも輝いていました。それ以外にも、マンゴスチン、ドラゴンフルーツ、ジャックフルーツ、スネークフルーツなど、日本ではあまり見かけないフルーツを楽しむことができました。ほとんどのフルーツは、皮を剥くだけで食べられるので、アウトドアにも最適です。バナナやりんご、みかんなど、いつでもどこでも手軽に食べられるフルーツは、ちょっとリッチな気分にさせてくれます。ホテルにチェックインした際、部屋に美しく並べられたフルーツがサービスで置かれていると、食べるかどうかは別としてリッチな気持ちになりますよね。朝食のビュッフェでも、普段あまりフルーツを食べないのに、全種類を制覇したくなる自分がいました。
わたしの素
印象に残ったのは、現地コーディネーターさんに案内された日本食レストランです。ゴルフ場の取材の流れで訪れた、ゴルフ場の施設内にあるレストランだったのですが、マレーシアで日本食を食べるとは思っておらず、寿司や茶碗蒸しのメニューを見ても品質に不安があり、「食べるならカツ丼か焼き魚かな〜」なんて考えながら、何をオーダーするか悩んでいました。
ところが、現地コーディネーターさんは、ウェイターさんがおすすめする寿司や西京焼き、刺身の盛り合わせ、お吸い物などを次々とオーダー。テーブルには、生魚や味噌、出汁を必要とする料理がどんどん運ばれてきました。それらの料理を恐る恐る口にしてみたところ……日本と遜色ない、むしろ日本でもトップクラスになりそうなほど美味しかったんです!
その場には自分を含め、各メディアから来ていた6人の日本人がいましたが、みんな同じ気持ちだったようで、少し警戒しながらの味見。食べた瞬間にザワつき、全員一致で「美味しすぎる」という結論に達しました。あまりの美味しさに写真すら撮り忘れて食べてしまい、「こんなに美味しい日本食を、日本から遠く離れたマレーシアでどうやって学んで、どうやって食材を手に入れているの? 作っている人は日本人?」と、6人ともそのシェフに興味津々。
美味しい料理への感謝と、実際に作っている方にお目にかかりたい思いから、「シェフを呼んでお礼を言いたい」と、人生で初めて言ってみました。結果的に「シェフは忙しいのでキッチンを離れられません」とのことでしたが、ウェイターさんを通じて美味しい料理を提供してくれたことへの感謝を伝え、シェフについて少し教えてもらいました。
思いがけない異国の地で味わった母国の味に感動し、美味しい食事、しかも自分にとってなじみ深いメニューを食べると、元気がもらえ、何より楽しくなることを実感しました。
ちなみに、シェフはマレー人で、半年間、日本の老舗和食料亭で修行した経験があるとのこと。誰もが知っている有名店とはいえ、たった半年でここまでのクオリティで提供できるとは、きっとただ者ではありません!