◎9月某日、スーパーオオゼキ
モモショウニク2マイ¥480、トリ¥214、トリ¥217、リンゴ¥199、生椎茸¥199、えのき茸¥109、ブナシメジ¥99、まいたけ¥318、長ねぎ¥199、万能ねぎ¥299、ナマニュウヨーグルト¥209、たまごは季節の贈りもの¥239 小計¥2,781 買上げ点数12点 合計¥3,003
鶏肉の特売日につき買い込む。野菜売り場を占めるきのこの面積が拡大、秋は近いぞ。まとめ買いして冷凍保存に精を出した。欲しいものだけ買って偉かった。こうしてレシートをしみじみ観察すると、レジに登録する商品名の基準に興味がわく。鶏肉「モモ」は部位まで表記してるのに、たしか2パック買ったムネミンチは「トリ」と急に雑。いっぽう卵はしっかり商品名なのである。
◎10月某日、スーパーオオゼキ
柿¥139×2ケ、リンゴ¥169、サンマ特大¥799×2ケ、ほうれんそう¥179、ルッコラ¥299、カイワレダイコン¥79、ナマニュウヨーグルト¥209、ニッシンヘルシーオフ900g¥279、ギャバンバジル¥150、ブラックペッパーミルツキ¥239、ナベキューブ¥279、カタアゲウスシオアジ¥169 小計¥3,927 買上げ点数14点 合計¥4,241
秋刀魚が当たり年で嬉しい。パサパサだと悲しくて、いっそ食べないほうが健やかに秋を越せると思うくらいに自分が秋刀魚に期待をしていると気づいたのは去年のことだった。だから今年もはなから諦めようとしていたところにきての当たり年。特売のこの日は「特大」を勇んで買って、2匹は食べ、もう2匹は冷凍。食後は堅あげポテトにトリュフパウダーをばっしゃばしゃにふりかけて背徳にまみれた。小岩井の生乳ヨーグルトは冷蔵庫のスタメンです。
◎11月某日、スーパーオオゼキ
コクサンギュウ¥1,244、コクサンブタバラシャブシャブニク¥798、生椎茸¥199、ヒトクチコマキシラタキ¥129、えのき茸¥139、長ねぎ¥189、春菊¥199、白菜¥169、ジャガイモフクロ¥199、リンゴ¥199、ナマニュウヨーグルト¥249、ニッコウアブラアゲ5マイ¥109、ムツミシロムクキヌドウフ¥229、DPSミックスチーズ800g¥999、タマゴシロミックス¥269、S&BノウコウズキWチーズ¥398、キンノツブトロッマメ¥89、マルミヤゴマシオ¥79、ミニボールドーナツチョコ¥179、キリオトシカステラ¥199 小計¥6,263 買上げ点数20点 合計¥6,764
賛否両論・笠原シェフのYouTubeを流し見してたら肉豆腐が実にうまそうであり、晩ごはんに召喚。「にっく〜♪どうふ〜♪」と浮かれて買い出しに出かける。「牛肉〜」「椎茸〜」「春菊〜」「白菜〜」「しらたき〜」「たまご〜」と点呼されつつレジを通過していく食材たち。視覚と聴覚から得た情報が脳で結ばれひとつの像を成し、はたと気づく。「もしかしてすき焼きを作ろうとして…い、る…?」浮かれの結果、肉豆腐がすき焼きに昇格しました。チーズのなにかは今となっては忘れたが、「ノウコウズキ(=濃厚好き)」とか改めて言われると恥ずかしい。ドーナツとカステラを一度に買うなんて!甘いものに取り憑かれていた時期だった。
◎12月某日、スーパーオオゼキ
ナガイモ¥169、春菊¥199、カブ¥299、レンコン¥161、サトイモフクロ¥169、紅天使フクロ¥299、アライゴボウ¥259、ニッコウアブラアゲ5マイ¥109、ムツミシロムクキヌドウフ¥209、ナマクリームチーズケーキカルピス¥129、キュキュットCジョキン700M¥429 小計 ¥2,431 買上げ点数11点 合計¥2,625
リビングの窓いちめんに見える桜と銀杏がいよいよ紅葉した。友だちと朝LINEをしていた流れで、お昼がてら遊びに来てくれることに。冷蔵庫とパントリーをのぞきつつ、献立を脳内スケッチ。栗ご飯、きのこと牛蒡と里芋のお汁、冬野菜と鶏肉のせいろ蒸し、デザートに柿。約束の時間まで1時間。時間はかけず、旬を満喫。足りないものを買い足しに、スマホにメモしてオオゼキへ。買い忘れもなく実にクレバー。カルピスが高級感を漂わせているとつい買ってしまう。だってチーズケーキ味よ、素通りできる?
家計簿をつけている。毎日という律義さはさすがに保てないので、月ごとに、食費、交際費、交通費、光熱費、生活雑費などとおおまかに分けて、エクセルと領収書の束をひとまとめにして、ファイリングしている。
こう書くとずいぶんマメに思われるかも知れないけれど、私は個人事業主でもあるので、どうしたって年に一度はお金の出入りと向き合わなければならず、とりわけコトゴトブックスを開業してからは仕入れや経費の管理がより複雑になったため、月末に、仕事とプライベートの支出を分けておくことで、面倒を細分化したというだけのことだ。
それでもこれが習慣になれば、そこに楽しみも見出だせるようになるというもの。一枚の紙の上でせめぎあう欲と自制、吝嗇と散財。私という経済の流れを、月に一度、可視化するのは実にスリリングで、とりわけスーパーのレシートなんていうのは、ものの名前とその値段が羅列されているので、その日その時期の物価に受けて立つ懐事情や、ものを手に取る手つきの迷いがうかがえて、なかなかにおもしろい。
さらにおもしろいのは、それをびっくりするほど「覚えている」ことだ。
試しに今回、月ごとのファイルからくじ引きのようにスーパーのレシートを抜き取り、日付と購入品からその日のできごとを推察するという遊びをしてみたのだけれど(仕事しなさい)、解像度の高さに改めて驚いてしまった。
覚えている、思い出せる。いやむしろ、隠せない。いいかっこしいが邪魔をして日記を書けない私でも、スーパーのレシートから振り返る日記なら、捏造のしようもないのでは?やけにさっぱりとした気持ちになって、レシートを陽にかざした。秋の陽が黄色い。
食べることをもとに日々を言葉で振り返りながら思ったのは、今井真実さん『料理と毎日12か月のキッチンメモ』、そして、彼女のレシピに支えられる私の料理と毎日だった。
毎日のごはんの献立と、その日に起こったできごとを日記スタイルでまとめた『料理と毎日』は、食べることは暮らしのなかにあるという至極当然なことを、しみじみと有り難く思わせてくれる一冊だ。
風邪ひきさんのための肉団子スープ、これで良かったんだ鯖の味噌煮、いいかげんロールキャベツ、あまりおすすめしないビーツの春巻き、サイゼのアレ、今井家の常夜鍋、いつ食べてもいいバナナチョコアイスなど、オリジナルの料理名にも今井家の暮らしが滲んでいて愛おしい。
20年来の梅仕事、緊張する仕事の前に思い出す言葉、自分のすっぴんにギョッとする朝、ヤフー星占い53点を助手席に乗せたドライブ、安野モヨコ展、ベン・フォールズ・ファイブ、「子供を育て上げる」というゴールに向かう日々……。その日の天気や気分が、自分や家族のコンディションが、または、目にしたことや聞いたことが、いかに食と繋がっているかを教えてくれる。
わたしの素
某月某日。ある日の夕食。
この日も今井真実さんのレシピで、「タコにらレモンのナンプラーごはん」を作った。
今井さんの料理は、やさしい。
なんか今日は元気出ないなってときや、「ごほうびごはん」にしたいけど外食で豪勢にってのとはちょっと違うんだよな、なんて日には、あれこれ考える前に今井さんの本を書棚から取り出して、料理と目が合う瞬間を待ちながらページをめくるようにしている。
探すというより、目が合うのを待つという感覚が今井さんの料理にはふさわしいと、書いてみて気づく。おおらかな気持ちで、私に見つけられるのを待ってくれているような味なのだ。目が合うと、だから懐に飛び込むような気持ちで料理をはじめる。
ボイルタコは薄切りに、ニラは小口切りに。サラダ油を入れて熱したフライパンに、タコとニラを入れたらさっと混ぜ、ナンプラーを回しかける。タコが硬くならないように、火はすぐに消すのがポイント。薄切りレモンを入れて蒸らしておいた白米に、さっきのタコを汁ごと入れて、黒こしょうをかけたらできあがり。
口に含むとナンプラーとレモンの香りが爽やかに広がって、タコは噛むたびギュッギュと鳴って、咀嚼の実感がおもしろい。疲れていたけどちゃんと食べたかったんだな。食べるという手応えを活力にしたかったんだなと、箸を運びながら気づいた。
〈よくもまあ、毎日こんなに料理して、毎日こんなに食べていたものだ〉と驚きつつも、〈生きていればみんな誰しもが、日々何かしらを食べて人生を全うしていくのです〉と、今井さんは言葉を重ねる。その響きに、私の日々が混じり合っていく。
料理と毎日は、まだまだ続く。