すぎたこ
すぎたこ
南越前町

すぎたこ

南越前町の河野の海沿いで、キッチンカーのたこ焼き屋「すぎたこ」を営む杉田さん。大阪で生まれ育ち、漁師になった旦那さんと関西から移り住んで「すぎたこ」をはじめた。子どもたちと暮らす河野での日々と、家族の食卓について聞きました。

漁師になりたい夫と、大阪から河野へ

友だちもイチから作らないといけない、知らない漁師町での暮らし。杉田さんを支えたのは、河野の人たちのあたたかさだった。

 

オイシサノトビラ
河野に来たのは、どんなきっかけだったのでしょうか。

 

杉田さん
旦那さんが漁師をしたくて、河野に来たんです。ちっちゃい時からお父さんと釣りや素潜りをしていて、海にゆかりがあったんですね。結婚した当時から、「おじいさんになってからでもいいから、いずれ船に乗って仕事したい」って言っていて。
それが、やっぱりやりたいってなって、自分で全国の漁師募集のサイトを探して、「体験行ってくるわ」って。帰ってきたら、「めっちゃよかったわ」って。私は、全然いいと思いました。やりたいことやったら。
行くってなったら、すぐ一緒に行きました。親方さんにも2人で話を聞きに行ったら、すごく人柄のいい人で。ちょうど若い人を募集していて、お互いに合ったって感じです。

 

オイシサノトビラ
知らない土地に来て、最初は不安じゃなかったですか。

 

杉田さん
不安でしたね。ちょうどそのタイミングで子どもができて、つわりもあるし、友達も一から作らないといけない。最初はホームシックになって、帰りたいなって思ったりもしました。
でも子どもが産まれたら、同世代のママ友ができていろんなところに連れて行ってくれたり、子どもを連れて一緒に出かけようって誘ってくれたり。そうやって友だちができて、「福井楽しいな」ってなって、そこからは全然帰りたいって思わなくなりました。
入ってしまったら、ほんまにみんなあったかいんです。今も、私がたこ焼き屋をやっている間に、子どもをプールに連れてってあげるよって言ってくれて。そうやって助けられてますね。

夫が獲ったタコと、妻が焼くたこ焼き

 河野で暮らして、もう10年。子どもは3人になり、関西の友だちもしょっちゅう遊びに来てくれる。旦那さんが漁に出る海のそばで、杉田さんはたこ焼きを焼く。

 

 

オイシサノトビラ
たこ焼きを始めようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか。

 

杉田さん
せっかく福井に来たから、ここでしかできへんことをやりたいなと思って。最初は、旦那さんが獲ってきた魚で、フィッシュバーガーみたいなものを考えたんです。でも調理師仲間に一緒に考えてもらっても、原価は高くなるし、特別感のあるおいしさもないし、あかんなって。
漁師嫁として、何か漁師飯でいいのないかなって相談していたら、仲間のひとりが「大阪やし、粉もんが一番。旦那さんタコ獲ってるやっん。シンプルにたこ焼きが一番やない?」って。せやなって。
そこから、いろんなところを食べ歩いて、友だちも呼んで試作です。タコも最初はゆでてやってみたけど、生でやったら、めっちゃプリプリしておいしくて、出汁も出て。「これいいやん」ってなりました。これやったら、漁師嫁しかできへんなって。それではじめたんです。

 

オイシサノトビラ
キッチンカーを選ばれたのはどうしてですか。

 

杉田さん
お店を構えると、来てもらわないといけない。河野まで来てもらうのは、なかなか大変やなと思って。でも、拠点は河野にしたかったんです。
私が住んでいて、すごくいいところやなと思ってるんですよ。人も景色もいいし、海が好きなんです。旦那さんもはたらいているところやし。この海で獲りましたよ、っていうのもアピールしたくて。
だから拠点は河野の海沿いにして、プラスアルファで、自分で出向けるようにしました。田舎やけど、河野の良さを、いろんなところで知ってもらって。こんなんあるんやって、遊びに来てもらいたいんです。

夕飯には、必ず旦那さんが帰ってくる

杉田さんの暮らしの真ん中にあるのは、家族そろっての夕飯だ。

 

オイシサノトビラ
河野にきて、思い出の食事はありますか。

 

杉田さん
獲れたてのサワラの刺身です。関西だと、サワラは鮮度がすぐ落ちちゃうから、西京焼きとか加工したものしかなくて。初めて刺身を食べた時は、めっちゃ感動したんですよね。サワラって刺身あるんや、こんな味なんや、って。
それから、旦那さんが漁師仲間に「こんな食べ方があるらしい」って教えてもらって。サワラをあぶって、カツオのたたきみたいにしたら、これがおいしいんです。

 

オイシサノトビラ
杉田さんの食卓は、どんな様子ですか。

 

杉田さん
もうみんな明るいですよ、めっちゃ。ニコニコで、子どもらもしゃべるし、うちはよく笑うし。学校で何かあっても、多分気づけるやろうなって思います。
だいたい、お魚が何かしらあることが多いです。旦那さんが「今日はなになに持って帰ってきたで」って。最近こだわってるのは、獲ってきたイワシで作った煮干しの出汁。めっちゃおいしくて、「今日は煮干しの出汁だね」って。
子どもらが、私のご飯が一番おいしいって言って食べてくれるのも、うれしいですね。長女なんかも、サワラの塩焼きで「これでご飯1杯いける」とか言いながら食べてます。

 

オイシサノトビラ
家族で過ごすときに、大事にしていることってありますか。

 

杉田さん
とりあえず、みんなが楽しく過ごせたらいいかなって。おいしいものを食べて、みんなで団らんして。
旦那さんも、夕飯の時間には絶対にいるんです。夜中の3時に出て、朝、子どもらが行くまでには帰ってくる。だから子育ても一緒にできてるし、私もそんなにストレスがないんです。
家族みんなで一番大事にしているのは、まあ、しょうもないことで笑い声が絶えないこと、ですね。

 

オイシサノトビラ
さいごに、杉田さんらしいご飯や、オイシサを感じる食事について教えてください。

 

杉田さん
やっぱり、毎日家族で囲む食卓ですね。子どもらが学校とかに行ったりしてると、その時間でしかみんな集まられへんっていうか。今しかない、この時間やから、すごく大事なんだなって思います。

 

連載

おいしさってなんだろう?をテーマに
その人らしい"おいしさ"をもつ
筆者たちの連載をお届けしています。

おすすめ