千と泊
南越前町の河野で、ご飯の店〈千と泊〉を営む村井さん。よそから移り住むまでと、町の人との付き合い、店に並べるご飯について聞きました。
「結局、来ちゃいました」
娘が小学生のころに、はじめて河野の海に来た村井さん。通っているうちに地元の人と親しくなり、移り住んだ。
オイシサノトビラ
河野にはどのようなきっかけで来たんですか。
村井さん
最初に来たのは、娘が小学校ぐらいの時です。福井県の中でいつも行くところは決まっていたんですけど、ちょっと河野に行ってみようか、という感じで来ました。
河野って、結構面白いんですよ。海水浴場に石の道があって、満潮になると、その石が消える。6月ごろには、カモメが岩で卵を産むので、ひなも見えるんです。海水浴じゃなくても、遊びに来ていました。
何度も来ているうちに、釣りも教えてもらって。いつも来ている人たちがいるので、友だちができるんですよ。民宿に泊まればイベントもやってくれて、地元の人と結構しゃべって。なんかいいなって思っていました。
そうやって通っている間に、来てもいいかな、と思うようになって。で、結局、来ちゃいました。
オイシサノトビラ
住むようになってから、町の人とのお付き合いはいかがですか。
村井さん
がっつり、仲いいですよ。町が小さいですから。
お店でも、お客さんと座り込んでしゃべってますからね、私。時間があれば、ちょっとでも声をかけるようにしているんです。
もちろん、しゃべるのが嫌な人もいるかもしれない。嫌そうだったら、あんまりしゃべらない。ちょっとしゃべって、ほっとく。自分を作ってやってても、つかれるだけなんです。
うちにご飯を食べに来てくれる人の中には、町長もいるんです。町長を見つけたら、「あそこがどうのこうの」とか、「こういうことをやりたい」とか、その場で話ができる。それぐらい、距離が近いんですよ。
河野でできることを、探している
県外から来て、河野に店を開いた村井さん。今は店のほかに、梅畑の仕事もはじめた。
オイシサノトビラ
河野に来てから、お店を開くまではどうだったんですか。
村井さん
古民家という形で探していたわけじゃないんですけど、とにかく空き家を探していたんですよ。そうしたら、近所の人によく声をかけるおじさんがいて、「何やってんだ」って。空き家を探してるって言ったら、「ここにあるぞ」って教えてくれたんです。持ち主さんがいい人で、「使っていいよ」と言ってくださって。
でも河野は、新しい店がなかなかできないところなんです。だから、私が店を出すって言った時は、「そんなもんできるわけないだろ」って言われました。
オイシサノトビラ
お店は、どんな場所にしていきたいですか。
村井さん
何かあった時に、とりあえずうちに来たらなんとかなる。そういう、地元の人の場所にしたいなって思っています。地元の人は、お店で魚をあんまり食べないんですよね。「魚以外でくれ」って言われるので、焼肉もあるし、豚肉もあるし、鶏肉もある。「これだったらできるよ」って言って、作っています。
オイシサノトビラ
お店の外でも、地元との関わりはありますか。
村井さん
今年から、梅畑の仕事もやってるんです。町には、実をちぎらないままの木があったんです。そんなもったいないことしたら、と思って、「ちょっと獲っていい?」と聞いたら、「好きにせえ」って言うから、みんなで収穫して出荷しました。それで、その夜は民宿で打ち上げです。
オイシサノトビラ
打ち上げも、地元の民宿でするんですね。
村井さん
行くんですよ、みんなで民宿に。だって、地元でお金を落としたいじゃないですか。
仕事も、地元でなるべく回したいというのが、私の中にあって。そうやって、河野でできることを探しています。
食べきれないほど、並べる
河野で開いた、はじめての飲食店。お客さんからは、「お母さん」と呼ばれている。
オイシサノトビラ
さいごに、村井さんがオイシサを感じる食事について教えてください。
村井さん
ご飯は、大体90%以上が手作りです。なるべく、自然のものを出したいので。酢の物とか、食べやすいものを、順番に並べていくんです。そこに、野菜を持ってきてくれる人もいて、「じゃあ、一品にするわ」とかね。そうやって並べてると、地元の人が来て「お母さん、こんなに食べないんだけど」って言われたりします笑
でも、なんか、そういう交流がうれしいんですよね。
了