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キャンプの定番メニュー

自然と、道具の扉

キャンプの定番メニュー

どの段階から刷り込まれているのか不明ですが、僕と同世代(アラフィフ)の人が思い描く定番キャンプ飯といったら、カレーと飯盒で炊いたご飯、そしてBBQ(という名の炭火焼き肉)じゃないでしょうか? キャンプを始めた当初は、僕も何の疑いもなくカレーを作って、BBQという名の炭火焼き肉でたくさんのお肉や野菜たちを炭にしてしまっていました。でも、今はそんな定番といわれるカレーをキャンプサイトで見かけることが少なくなっている気がします。
自分が関わって、運営をしているアウトドアイベント「GO OUT CAMP」で、仕事の合間に知り合いのキャンプサイトを訪れて食事をいただくことがあるのですが、カレーも焼き肉も食べた記憶がありません。また、仕事柄、いろいろなキャンプイベントなどにもお邪魔するのですが、やはりカレーを作っている人はあまり見かけません。お肉料理の登場率は高いのですが、いわゆる炭火に網をのせてスライス肉を焼く、焼き肉スタイルではなく、大きな肉の塊を豪快に焼くアメリカンなBBQをお見かけします。

それ以外に、ご当地の美味しい食材や、ちょっと贅沢な海鮮、だいぶ高級な霜降り肉などを持ち込んでいる人もよく見かけます。せっかくのアウトドアでの食事ということで、いつもより贅沢をして、外で食べることをしっかりと楽しむのが主流なようですね。

食材はもちろんですが、料理道具にこだわっている方も多くお見かけします。魔法の黒いポットと称されるダッチオーブンに、最近ではマルチグリドルという新勢力も人気を集めていますね。どちらの道具も、調理工程としては、入れて(のせて)焼くだけで美味しくなるってところがポイントのようです。調理工程の多いメニューより、道具に任せて、手軽に簡単に美味しいものを食べることで、限られたアウトドアで遊ぶ時間を有効活用するってことですね。
アウトドア時間を有効活用するということなら、缶詰やレトルト食品。これもアウトドアに特化したものがあったり、味にこだわった高級商品が開発されていたりするので、改めて掘り下げてみたいと思います。

話は戻りますが、そもそもなぜカレーがキャンプで作られるようになったかについて調べてみたところ、実は第二次世界大戦後、日本の占領政策を行っていたGHQが打ち出した「男女平等」が根本にあるようです。それまでの日本の男性社会を問題視したGHQはさまざまな男女平等に関する改革を行っていて、その一環として、青年男女の健全育成のためにキャンプを推奨したそう。グループワークの多いキャンプでは協力し合わないと物事が進んでいかないため、コミュニケーションが生まれて自然と人間関係が形成され、健全な男女交際に繋がるという考えがあったとのこと。また、GHQの推奨を受けた文部省が野外学習をする施設である「青年の家」を設置して、その野外学習で推奨されていたのがカレー作りだったということです。調理工程が多いカレー作りでコミュニケーションが生まれやすいというのが利点だったそうです。

ですが、そんなこととは露知らず、ひとりでせっせと楽しく美味しくカレーを作っておりました。これからキャンプでカレーを作る時はひとりではなく、みんなで作業を分担してコミュニケーションを大切にして作ろうと思います。
そういえば、過去にアウトドアイベントでグッチ裕三さんの料理教室を拝見したことがありまして、その時に作られていたのはカレーでした。ファミリンゴカレーというもので、確かに家族みんなでカレーを作ろうという企画でした。さすがグッチさんです!! 肝心のカレーの味は辛くて甘い、ちょっとトロピカルな感じのする不思議な味がクセになる美味しいレシピだったので、また自宅でひとりで作ってしまいました……。次は家族で協力して作らないとですねっ。

わたしの素

魔法の黒いポットといわれるダッチオーブン。結構愛用しております。本当に便利で、食材を入れて、火にかけて、しばらく放置するだけで、肉も野菜も美味しく仕上げてくれます。ピカピカの料理道具もいいのですが、旨い出汁が出てきそうな、真っ黒に年季の入った道具も魅力的で、フライパンも家族の反対を押し切ってスキレットを採用していたりします。
ただ、問題になるのが、その重量感。スキレットとダッチオーブン2つを持っていくと、それだけで15kg近くなるので、実はキャンプでの登場より自宅での使用頻度の方が圧倒的に多いです。
ダッチオーブンを使った自分の鉄板レシピは、丸鶏に冷凍ピラフを詰め込んで、周りにじゃがいも、にんじん、玉ねぎ、かぼちゃを適当に入れて、オリーブオイルと塩胡椒を少々、ついでにローズマリーを少し添える。あとは火にかけてしばらく待つだけ。余力があれば炭を2つほど熾(おこ)して蓋の上に置けば、カリッと表面に焦げ目もついて映える仕上がりになります。本当に入れるだけの簡単メニューなのに、ビジュアルと味で、確実に食卓を盛り上げてくれます。

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