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「小さな会社」

「小さな会社」

2020年6月に14年勤めたTBSテレビを辞めて関西テレビに入社した。転職前、尊敬している業界の先輩プロデューサーから、「移籍して3本が勝負だよ」と何度も言われていたので、とにかく3本頑張ろうと心に決めて新しいスタートを切った。  
そこからとにかくがむしゃらに走って走って、『大豆田とわ子と三人の元夫』『17才の帝国』(これはNHKで制作)『エルピス』と、これまでやりたかったけどやれなかったことを詰め込んだドラマを3本プロデュースすることができて、一通りの仕事が終わった2022年暮れ、燃え尽き症候群とまでは言えないけれども、なんだか気が抜けてしまって自分の中身がすっかり空っぽになってしまったような気持ちになった。
「あれ?私はこれから何をしたらいいんだっけ…」
ちょうど40歳になったばかりだった。ここから自分はどう生きていくのか。不惑に入っていきなり惑い出した。40歳の年まで妊活をしようと決めていたので年明けからはまた不妊治療が始まるし、すぐにまたドラマを立ち上げるというわけにもいかず、さてどうしようかと考えた時にふと「会社を作ろう」と思い立った。

私がドラマを作るときにいつもいろいろ相談をしてきた大切な友人(『大豆田とわ子〜』のかごめちゃんのごく個人的モデル)と、これまでの仕事にとらわれない、新しい分野にチャレンジできるような小さな会社を立ち上げることに決めた。2022年12月24日、クリスマスイブの夜に近所の居酒屋で、もろこし茶割を飲みながら会社名や理念、業務内容について友人と話し合った。

元々は友人の名前を文字った「COSCOS Entertainment」という社名を仮につけていたのだけど、いざ登記するとなると、「もうちょっと…社会に開いた名前にしよう!」ということで、それぞれ本業があり副業としてやる個人的な会社だからこそ、できるだけ自分たちの純粋な想いに近い形で世の中に出したいねといろいろ話し合った。作家でもクリエイターでもアーティストでもない私たちができること、やりたいこと、こうあれたらいいねという理想。あーだこーだと言いながら決まったのが、「社会を見つめ、じっと観測して作品をつくっていきたい」という想い、そしてそこから名付けた「CANSOKSHA」という社名。

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我々はクリエイター(創造者)ではありません
社会に黙殺される声なき声に耳を澄ませ
日々忙殺され見えないものに目を凝らす
そんな観測者(CANSOKSHA)の集団です
一つ一つを丁寧に観測し、編集し
映画・ドラマ・書籍あらゆる媒体を通じて
世の中に伝えたい
より良い社会に向けて
エンターテインメントの力で貢献したいそんな想いで運営される会社です

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こんな大きな理念を掲げてスタートした小さな会社だったが、ありがたいことに昨年1年間で予想もしなかったいろいろなお仕事の依頼をいただき、海外出張まで行くことができた。映像作品の企画だけでなく、エンターテインメント業界に関するリサーチ業務やコンサルティングのようなこと、仕事についてお話ししたり文章にしたりするお仕事、大学での講義。妊娠・出産があったのでかなりセーブした部分もあったけれども、これまでやったことがなかったいろいろな分野の仕事に挑戦することができたし、今も友人と一緒に連続ドラマの企画開発を複数はじめている。

登記上の社員は二人だけ、でも業務が増えていくに従って業務提携という形で仲間が増えていって、今まで一人きりで動くことが多かった私の毎日に、「仕事仲間に相談する」という時間が増えたことは人生においてものすごく大きなことだと感じている。40歳になった時に生まれた「これからどうしていけば?」という惑いは、たぶん3本のドラマ制作を走り切ったことでかえって自分の力の限界を知り、これからはもっともっと誰かの力を借りながら一緒に作品を作っていく、ともに生きていく、という方向に舵を切りたかったことのあらわれなんだと振り返って感じている。このことに付随する、私が無意識にずっと持っていた「自分が全てをコントロールしたいという欲求」については子育てをしながら日々痛感しているのでどこかで書きたいなと思う。

わたしの素

CANSOKSHAの登記を終えたのが2023年1月はじめ。せっかくなので社員旅行に行こう!ということで1月下旬からメキシコに2週間ほど行ってきた。

20代、30代はドラマが終わるたびにらいずっと旅をする、という生活だったので、旅は自分の人生と切っても切り離せないものだ。物理的に大きな移動をして非日常にいくことで、ストレスフルな毎日でギリギリを保っていた精神をどうにか癒やしているようなところがあった。でも今回は社員旅行だし、ストレスフルな毎日ではなかったので、また違った面白さがあった。メキシコは、人口は日本と同じぐらい、でも国民の平均年齢が29歳と非常に若くて経済も成長真っ只中!という空気が伝わってくるとてもエネルギッシュな国だった。たぶんそのエネルギーにあてられたのか、旅行中にそれぞれの中で溜まっていたことを一気に吐き出して、オアハカの街のオープンエアの人気ピザ屋で生ハムがたっぷりのったピザを食べながら大泣きしたことを思い出す。旅も友人との腹を割った真剣な会話も、私を形づくる大切な1ピースだ。

 

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