

──── そのイラストは、思わず「かわいい」と言葉が出てしまう。そのイラストは、彼女が描いたものだと一目でわかる。独特なタッチのイラストと、温かみのあるフェルト作品が魅力のドメニカ・モアゴードンさん。愛らしくて個性的な表現が生まれた背景や、彼女が犬や動物に込める想い、そして暮らしの中で大切にしていることについて話を聞きました。

プロフィール
Domenica More Gordon / ドメニカ・モア・ゴードン
イラストレーター兼テキスタイルデザイナー / スコットランド出身
ドメニカさんのイラストやフェルトワークのファンは、日本にもたくさんいます。日本に何度か来ていると思うのですが、どのような思い出がありますか。
「日本にもわたしの作品を好きな人がいてくれてとてもうれしいです。わたしは日本を訪れるたびに、日本の魅力や想像力に驚かされます。日本人の想像力は、街の細い裏通りから中央の店のウィンドウのディスプレイまで、あらゆるものに生かされていると思います。わたしが初めて日本に訪れたとき、お店の窓に小さくて丸い苔球が吊るされていて、そこから植物が生えている店に入ったことを覚えています。それはわたしにとって、とても魅力的でした。ひとつひとつが完璧だと思える場所でした」
「東京の小さなレストランでのことも覚えています。小さなお店なのに、料理が次々と出てきて、ひとつひとつが手作りの皿や器に盛られていた。細部へのこだわりや、料理の調理法、盛り付け方など、ひとつひとつに喜びや驚きがあって魅了されました」
ドメニカさんのイラストにもひとつひとつ喜びや愛らしい表情を見ることができます。ドメニカさんが描くとても温かみのある動物のイラストは、どのようにして生まれたのでしょうか。
「わたしが子どもの頃、祖父は飼っていた犬の冒険を綴った手紙を送ってくれた。わたしは祖父に向けて手紙にイラストを入れてやりとりをしていました。 それがすべてのはじまりだったの。それからわたしが大人になって自分の子どもが生まれた時に、アーチーという犬の話を書いていくなかで犬や動物のイラストが誕生していきました」
ドメニカさんが描く犬や動物は、人のような姿をしていることがありますね。
「まず、わたしは犬が大好きなんです。わたしが子ども向けの絵本を書きはじめたとき、読者の感情を引き出すには、物語の中に人を登場させるよりも犬のほうがはるかに優れていることに気づきました。犬は読む人の感情を引き出すのに完璧な方法だって。人にはさまざまな偏見があり、それが邪魔になることも多々あります。犬を登場させることで、そのような先入観を断ち切って、普遍的な理解に導いてくれると思いました」

特別な場面ではなくて、生活の一部を切り取ったふつうの日常がとても素敵だと思います。
見た人にどのようなメッセージを届けたいと思っているのか。
「わたしが目指しているのは、小さな方法でも、見てくれる人の心を惹きつけて、喜んでもらえること。ほんの少しの感動を共有したいと思っている。人々には、つながりを感じてもらいたいと思っています」

ドメニカさんご自身についても知りたいです。ドミニカさんにとって食事とはどのようなものでしょうか。
「食べ物は人生の大きな喜びのひとつだと考えています。栄養と安らぎを与えくれて、人々をひとつにしてくれるもの。何かをお祝いするときには、食べ物はかかせないですよね」
ドメニカさんにとっての安らぎとはどのようなものですか。
「わたしにとっての安らぎとは、家庭的なシーンのことをいいます。料理をしたり、友人や家族が滞在したり、火のそばにただ座って読書をしたり、そのような時間のことだと思います」
人と集まった時やお祝いと食事についての話もありましたが、食事に関するエピソードを教えてもらいたいです。
「新しい人と会うのはとても楽しいことだと思っています。これはメールやインスタグラムでも起こりうることですよね。わたしたちが思っている以上に、出会う人と共通点があるものです。最近わたしは、色とりどりの糸を編んで立体的な作品を作る素敵な女性と出会いました。彼女もまた犬が大好きだったので、すぐにつながることができました」
ドメニカさんはどのような食事が好きですか。
「毎年この時期になると、わたしは女性の友人たちとエジンバラの家族経営のイタリアン・デリ/レストランでお昼ご飯を食べます。そこには、昔からの友だちの中に、いつも新しい人がいる。それがうれしいです。特にヨーロッパのつながりが深まったことで、今はわたしが子どもの頃よりもずっと幅広い選択肢があります。スコットランド料理で好きなのは、寒い日や夜にぴったりのじっくり煮込んだシチューですね」
わたしの素
ドメニカさんにとっての大切な食事の記憶について教えてください。
「わたしの一番のお気に入りは、スコットランドの西海岸からはるか北に連なるアウター・ヘブリディーズ諸島で休暇を過ごすときに食べる食事で。ひと気のない浜辺で、焚き火を囲みながら長い時間をかけて昼食を作って、語り合う時間です。わたしは幸運にも料理上手な男性と結婚したので、彼がごちそうを作ってくれるときは、それもまたわたしの大好きな食事なんですよ」
profile
Domenica More Gordon / ドメニカ・モア・ゴードン
イラストレーター兼テキスタイルデザイナー / スコットランド出身。
ロンドンにてテキスタイルデザインを学び、スタイリストとして雑誌を中心に活躍。
その後スコットランドに戻り、自身の子供たちの為にフェルトワークをはじめる。