季節のお知らせ|処暑
8月23日 〜 9月6日頃は処暑(しょしょ)と言い、暦の上では厳しい暑さが少しずつ落ち着き始める頃とされています。実際にはまだ夏の暑さが残りますが、夕暮れが少し早くなり、風や空の色に、次の季節の気配が混じり始めます。
季節というと春夏秋冬の四季を思い浮かべますが、一年を24に分け、季節の移ろいを表した「二十四節気」という暦があります。そして、二十四節気をさらに3つに分けたものが「七十二候」。処暑のおよそ15日間にも、自然は少しずつ姿を変えていきます。綿の実が開き、空気が変わり、穀物が実り始めるという、3つの小さな季節があります。
その移ろいから感じられるものを手がかりに、3つ侯をイメージしてオイシサの話をお届けします。
第四十候|綿柎開(わたの はなしべ ひらく)「夏のパリが好きだ」川村明子(フードコラムニスト)
天地始粛(てんち はじめて さむし)「あの人のオイシサ」haruka nakamura(音楽家)
第四十二候|禾乃登(こくもの すなわち みのる)「ネパール旅日記 」鈴木優香(山岳収集家)
8月23日 - 27日頃
第四十候|綿柎開(わたの はなしべ ひらく)
柎(はなしべ)とは、花の萼(がく)のこと。夏に花を咲かせたワタは、実を包んでいた萼が開き、ふわふわとした白い綿毛をのぞかせます。まだ強い日差しが残る一方で、自然の中には、夏の終わりを知らせる小さな変化が現れ始めます。終わりが近づいていると気づくと、いつもの光や味を、もう少しだけ大切にしたくなる。夏が過ぎてしまう前に、今のうちに味わっておきたいものがあります。

夏を惜しむ|「夏のパリが好きだ」川村明子(フードコラムニスト)
多くの人がバカンスへ出かけ、いつもより静かになる8月のパリ。川村明子さんは、マルシェで待ちわびた夏野菜を買い、トマトを煮込み、ラタトゥイユをつくります。夏の太陽をたっぷり浴びた味を、体の中に蓄えておく。夏が終わってしまう前に、もう一度読みたくなる話です。
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8月28日 - 9月1日頃
第四十一候|天地始粛(てんち はじめて さむし)
天地の暑さが、ようやく鎮まり始める頃。日中にはまだ夏の暑さが残っていても、夕方に吹く風や日が落ちる早さに、少し前とは違うものを感じる日が出てきます。季節の変化は、暦を見て知るより先に、夕暮れの光や風、音の中に現れるのかもしれません。いつもの夕方なのに、なぜか心に残る。そんな一瞬から生まれるものがあります。

夕方の空気に気づく|「あの人のオイシサ」haruka nakamura(音楽家)
青森で育ったharuka nakamuraさんが、幼い頃にふと「音楽」を感じたのは、夕暮れの風景の中でした。心に残る風景に出会うと、自分の内側から音楽が鳴り始める。もうひとつ忘れられないのは、Nujabesさんと一緒に眺めた鎌倉の夕暮れ。日が傾き、光や音が少しずつ変わる時間に読みたい話です。

9月2日 - 6日頃
第四十二候|禾乃登(こくもの すなわち みのる)
禾(のぎ)とは、稲などの穀物を表す言葉。春から夏にかけて光や雨を受けて育ってきた穀物が、穂を垂らし、少しずつ実り始める頃です。ひとつの季節を重ねてきたものが、目に見える形になっていきます。旅の時間も、帰ってきたあとに振り返ることで、何が心に残ったのかが見えてくることがあります。景色よりも先に思い出すのは、あの日に食べたものや、手の中にあった温かい飲みものかもしれません。旅先で感じたことが、思い出になっていく。そんな旅の実りを、食事の記憶からたどります。

旅のあとに残ったもの|「ネパール旅日記 」鈴木優香(山岳収集家)
2週間の旅を終え、すでに帰国した鈴木優香さんが、「まだまだ余韻に浸っていたい」と綴った食の記録。トレッキングの途中で食べたダルバート、山小屋で何度も飲んだ甘い紅茶、無事に下山してから口にしたコーラ。歩いた時間の中で食べたものをたどると、旅で受け取ったものが、帰ってきたあとにも静かに残っていることがわかります。

夏から、次の季節へ。
処暑の15日間に、綿の実が開き、天地の暑さが鎮まり、穀物が実り始めます。けれど、季節が動いたと感じる瞬間は、自然の変化だけにあるわけではありません。
終わる前に、もう一度味わいたい夏。
いつもとは違って感じた、夕暮れの光や風。
時間が経ってから輪郭を持つ、旅の記憶。
二十四節気、七十二候をきっかけに、この季節の「オイシサ」を楽しんでみてください。
次の二十四節気は、白露(はくろ)です。
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