季節のお知らせ|寒露
10月8日 〜 10月22日頃は寒露(かんろ)と言い、草木に宿る露が冷たく感じられる頃とされています。日中にはまだ暖かさが残るものの、朝晩の空気はひんやりとし、木々の色づきや虫の声にも秋の深まりが感じられる時季です。
季節というと春夏秋冬の四季を思い浮かべますが、一年を24に分け、季節の移ろいを表した「二十四節気」という暦があります。そして、二十四節気をさらに3つに分けたものが「七十二候」。寒露のおよそ15日間にも、自然は少しずつ姿を変えていきます。雁が北から渡ってきて、菊の花が開き、戸口の近くで蟋蟀が鳴くという、3つの小さな季節があります。
この季節に合うオイシサの話をお届けします。
第四十九候|鴻雁来(こうがん きたる)
私の家、私の家族|木村綾子
第五十候|菊花開(きくの はな ひらく)
VAG/曖昧|山野アンダーソン陽子
第五十一候|蟋蟀在戸(きりぎりす とに あり)
あの人のおいしさ|小菅くみ
10月8日 - 12日頃
第四十九候|鴻雁来(こうがん きたる)
燕が南へ帰る頃、入れ違うように雁が北から渡ってきます。シベリアやカムチャツカから海を越え、日本で冬を過ごす鳥です。列をなして空高く飛ぶ姿は、『枕草子』にも秋の趣として記されました。雁は古くから、遠く離れた人の便りを運ぶ鳥とされ、「雁の便り」という言葉も生まれました。遠くから届いたものが、言葉よりも上手に気持ちを伝えてくれることがあります。

この季節に読みたい話
私の家、私の家族|木村綾子(コトゴトブックス店主)
家族と離れて暮らしながら、自分にとって「家」や「家族」とは何かを考えることが多くなってきた木村綾子さん。帰省した際に弟とちょっとした諍いをしてしまい、話し合う糸口を見つけられないまま東京へ戻ります。そんな折、弟から届いたのは、木村さんの好きな白焼きの鰻。離れた場所から届いたひと包みをきっかけに、家族との関係にもう一度向き合おうと思うお話です。

10月13日 - 17日頃
第五十候|菊花開(きくの はな ひらく)
各地で菊の品評会や菊まつりが開かれる頃。旧暦9月9日の重陽の節句には、菊花酒を飲み、歌を詠み、花の美しさを競う「菊合わせ」が楽しまれました。同じ花を前にしても、心に残る色や形、美しさは人によって違いますよね。

この季節に読みたい話
VAG/曖昧|山野アンダーソン陽子(ガラス作家)
ガラス作家・山野アンダーソン陽子さんの「VAG/曖昧1」から「VAG/曖昧3」までのシリーズ。人によって異なる豊かさや、「おいしい」という同じ言葉の中にある感覚について、デザイナーの柳原照弘さんとの対話を交えながら考えます。同じ時間を過ごしていても、味や感情、思い浮かべる情景は一人ひとり違う。その違いを残したまま感覚を分かち合う、「曖昧」の豊かさを見つめるお話です。

10月18日 - 22日頃
第五十一候|蟋蟀在戸(きりぎりす とに あり)
秋が深まり、ツヅレサセコオロギが鈴のような音を響かせる頃。昔の人はその声を「肩刺せ、裾刺せ、綴れ刺せ」と聞き、繕いものを急ぐ合図のように受け取りました。夜が少しずつ長くなるこの時季、身近なものを繕ったり、何かをつくったり。手を動かして過ごす時間が、いつもより豊かに感じられます。

この季節に読みたい話
「あの人のおいしさ」|小菅くみ(刺繍作家)
刺繍作家の小菅くみさんが刺繍と出会ったのは、長い入院生活の中でした。ベッドの上でもできることとして始め、友人の服に刺繍をするうちに、頼まれる仕事が少しずつ増えていきます。ものをつくる楽しさと、祖母から受け継いだ好奇心は、刺繍だけでなく、日々の料理にもつながっています。手を動かすことが、人とのつながりや自分の支えになっていくお話です。

寒露の15日間。遠い海を越えて雁が渡ってきて、菊の花が開き、戸口では蟋蟀(コオロギ)の声が聞こえます。
そんな秋が深まる頃、身近な人やものとの関わりに、あらためて目を向けるのもいいかもしれません。
届いたものを手に、誰かの表情を思い浮かべること。
同じものを前に、それぞれの感じ方を分かち合うこと。
手を動かしながら、できあがるまでの時間を楽しむこと。
二十四節気、七十二候をきっかけに、この季節の「オイシサ」を楽しんでみてください。
次の二十四節気は、霜降(そうこう)です。
メッセージ