ドラマ制作日誌⑬ キャスティング裏話・前編
無事ドラマ『銀河の一票』の最終回の放送を終えて、今これを書いている。
1人で取材を始めた時から考えると足掛け3年。ちょうど妊娠がわかった頃から政治家の取材を始めたので、妊娠・出産・乳児〜2歳の育児の記憶と共に、『銀河の一票』を作ってきた記憶がある。きっとこれからも子供の幼い頃の写真を見るたびにこのドラマのことを思い出すんだろう。

これまで色々なインタビューを受けて、ドラマにまつわる取材のことや脚本作りのことについて答えることが多かったのだけど、今日は聞かれることが少なかったキャスティングのことについてせっかくなので振り返ってみたい。“野呂佳代さんの抜擢”についてはたくさん答えてきたので野呂さん以外について(個人的には抜擢だと思っておりませんが…)何回かにわけて書いてみる。
主演、黒木華さん。ずっとずっと好きで、いつかお仕事をしてみたいと思っていた俳優さんだった。まず声がいい。何か作業をしていても黒木さんの声が聴こえてくるとふっとそちらに目をやってしまう。そして個人的なことではあるが、私は松たか子さんと複数回お仕事をご一緒していて、黒木さんが松さんの黒目と同じ黒目を持っているように感じている。底知れない黒さ。笑っていてもどこかもう一つ感情が奥にあるような、でもものすごく純粋な黒さでもあるような…。「政治の世界をよく知っていて、手練手管もよくわかっていて、でもある純粋さと猪突猛進さを持っていて…」というアンビバレントな性質を持つ“茉莉”を演じられる30歳前後に見える役者さんを考えると、もう黒木さんしかいなかった。第1話の脚本をお渡ししてからわずか2日間で出演を快諾してくれた肝の座り方(通常はもっと時間がかかります)にも感服した。精神的にも物理的にも、このドラマの座長としてみんなを引っ張り続けてくれた。黒木さんしかあり得ない“茉莉”だったし、ご一緒できて本当に本当によかった。
続いて岩谷健司さん。「城山羊の会」はずっと観てきた大好きな演劇ユニットで、『大豆田とわ子と三人の元夫』でも“とわ子”に卵をくれる人として少しだけ登場してもらった。岩谷さんが出てくるとそこに歴史が生まれる。どんな人生を歩んできた人なのか、その佇まいで表してくれる。いつかレギュラーの役でぜひお願いしたいなと思っていたところで、脚本家の蛭田さんと「最初に仲間になるのは選挙参謀の凄腕。“鷹臣”の元をクビになった元秘書とかがいい」という方向が決まった時に、「その役はぜひ岩谷健司さんにお願いしたいです」と頼み込み、脚本はなかったがマネージャーさんにすぐ電話してオファーしたい旨を伝え、蛭田さんにあて書きをしてもらったのが個人的にも思い入れの深い第4話。

坂東彌十郎さん。『鎌倉殿の13人』の時政パパで射抜かれ、ずっと気になってはいたものの、実はこの役を誰にお願いしようかずっと悩んでいた時に、ミリアゴンスタジオの村田プロデューサーが「坂東彌十郎さんはどう?」と提案してくださったのだった。出産・育児でしばらくお休みしていたのもあり、キャスティングに関しては今回できるだけいろんな人の意見を聞こうというのを心がけていたのだけれど、最初に手を差し出してくれたのは村田さんだった。彌十郎さんが演じる”鷹臣”は、脚本からイメージしていたよりもエモーショナルで、人間らしい”鷹臣”で、初めてお会いした時に透き通るようなお肌の白さと、首からお顔にかけてのラインがなんとなく黒木さんと似ていて、父娘だ…!と興奮したのを覚えています。
今回の日誌の最後に松下洸平さん。ドラマの企画を立ち上げた当初、政界を追い出された大物政治家の娘、政治素人のママタレ(蛭田さんと出会うまで、スナックのママではなくママタレという設定でした)、そしてライバルになる幼馴染みの人気若手政治家、という3人はイメージしていて、いずれ“流星”になるその政治家役は、本当の感情が見えない、でも噓をついているわけではない、そういう、なんというか余白のようなものがある人がいいなと思っていて、噓偽りなく最初に浮かんだのが松下さんでした。松下さんの”流星”がいかに素晴らしかったかは多くの方が語ってくれているので割愛しますが、最終回の魂の演説。17時ぐらいからテストを始めた長きにわたる撮影で、松下さん側の撮影を行ったのはなんと深夜2時を過ぎていました。大勢のエキストラさんや翌日撮影がある俳優さんたちを先に帰すために、松下さんは自分は映らないカットでも何度も演説をしてくださった上でのあの演説だった。感謝してもしきれない。
……と書いていたらこんなに長くなってしまったので、続きは次回の制作日誌に書かせていただこうと思う。もう少しだけお付き合いください。


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