写真家|長野 陽一
────前編は、"おいしい写真"で反響を呼んでいる長野陽一さんに、キャリアのきっかけと目指す写真のあり方を聞いた。
日々、仕事で様々な食の写真を撮るようになった今も、作り手のこだわりやストーリーを切り撮りたいと考えている。そんな長野さんのおいしい食の記憶は、大学時代に旅したインドにまで遡る。

「当時、沢木耕太郎や金子光晴のドロップアウトしたような紀行文に影響を受けて、何度もインドに行っていました。貧乏旅行だったけど、トータルで1年弱にはなると思います。そのうちに現地の人と同じようにカレーを手で食べるようになった。最初は『ついにやっちゃったな』みたいな感覚でしたね。見様見真似でね」

当初はコツもわからず、口の周りを汚し、手をベタベタにしながら食べた。何度もやるうちにだんだん慣れてきて、指の第二関節までを上手に使って食べるコツがわかってきたという。
「南インドのケララ州のカレーを出す〈三燈舎〉は、手食もおすすめしてくれていて、インドでやっていたのと同じように堂々と、手でカレーを楽しむことができる。これがめちゃくちゃ旨い! スプーンを使うとカトラリーの味がなんとなくしてしまうというか。手食は指先から食べ物の温度が伝わってきて、なんともいえない解放感があるんです。インドで、食べることの価値観も変わりました。土地やライフスタイルに基づいた食というものに惹かれる、自分の写真の原点的な味がここにあると感じます」


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