双子のライオン堂(東京)
東京都港区赤坂にある「双子のライオン堂」の竹田さんに、この季節におすすめしたい本やその一文など、日々の過ごし方のヒントにつながる話をうかがいました。
──── 双子のライオン堂
双子のライオン堂は、作家や研究者など読書家の視点で本を集める、ユニークな本屋。店主が一方的におすすめするのではなく、「100年後でも読みたい本」を、さまざまな分野の人たちと一緒に選んで並べているのが特徴です。店内では読書会やイベントも開かれていて、本を買う場所というより、本について話し、考える時間まで含めて楽しめるのも魅力のひとつ。知的な熱気と落ち着きが同居する場所です。
季節のおすすめ by 竹田さん
この季節におすすめしたい本
『枕草子/方丈記/徒然草』 酒井順子/高橋源一郎/内田樹 訳(河出書房新社)
『徒然草』は、吉田兼好がなんでもない日常の風景を、今でいうつぶやきのような形で切り取って書き連ねたものです。何もすることがない「徒然」と、雨が多い季節の手持ち無沙汰な感覚は共鳴するものがあると思います。

好きな一文
「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」
(第百三十七段)
この一文に惹かれたのは、その後の文にもあるように、雨の日に部屋の中で見えない月を恋しく思う気持ちを大切にしていたいからです。日々の中で忘れてしまいがちですが、そうした感覚を思い出させてくれる一文だと思います。夜中に読むのが似合う本で、読み終えたあとには、見えないものにも目を開き、日々の機微を感じていきたいという気持ちが残ります。
原文は難しいという人は、日本文学全集(河出書房新社)の7巻をおすすめします。この全集シリーズでは、いろんな現代作家が古典の現代語訳に挑戦しています。「徒然草」は内田樹さんが担当していて、過度にひらきすぎず硬くなりすぎずのバランスがよく、読みやすいと思います。
──── オイシサノトビラでは、食べものの味そのものだけでなく、それを囲む時間や空気、そこで生まれる記憶まで含めて「オイシサ」と考えています。本の中で描かれている「オイシサ」で竹田さんが好きな本を教えてください。
オイシサが描かれている本
『美味しんぼ』原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)
友人に紹介されて一気に読んだ『美味しんぼ』は、非常識なほどにこだわった料理シーンにオイシサを感じる作品です。現代的ではないシーンも多いのですが、食べものへの向き合い方がとにかく徹底していて、その熱量に引き込まれます。読むと食べたくなるものとして思い浮かぶのは、本編から少しスライドしますが、魯山人の「鮎」です。たぶん、魯山人をモデルにした海原雄山というキャラクターから連想してますね。
ついつい忙しくして「食べれればなんでもいいや」と手を抜いてしまうんですが、『美味しんぼ』には料理そのものへのこだわりが描かれていて、読むと自分も手間のかかる料理を作りたくなりますね。

──── さいごに、竹田さんらしい「オイシサ」について教えてください。
食材を活かしたシンプルなものが好きです。朝食の「卵料理」のデキには毎朝一喜一憂してます。目玉焼きは特に難しく、朝早く起きて、家族の分の目玉焼きがうまく焼けるとうれしいんです。それぞれ黄身の硬さの好みが違ったりして、そういうところにも食の「オイシサ」の多様さを感じますね。
双子のライオン堂
東京都港区赤坂6-5-21
営業時間:15:00~20:00
定休日:日曜・月曜・火曜
Instagram:@liondobooks