ドラマ制作日誌⑪
これを書いている今は、4月28日火曜日の朝7時半。都心のエアポケットみたいなところで撮影をしながら、昨日放送した「銀河の一票」第二話のみなさんの感想をチェックしている。毎度のことではあるが、私はついつい「***(番組タイトル) 面白くない」「*** 離脱」「*** 微妙」というようなネガティブワードばかり検索してしまうので、現場で「評判はどうですか?」と聞かれるとどう答えたらいいかわからなくて少し困ってしまう。面白かった、という感想を素直に受け取れるようなメンタルをいつか持てるようになるのだろうか。
プロデュースしたドラマの放送がはじまりたくさんの人に観てもらえるのが嬉しい半面、これまで自分の手の中にあったような気がしていた作品がすごく遠くに行ってしまったようにも感じる。長い時間をかけて、手を替え品を替え、様々な方法で温め続けていた卵が孵ったと思ったらあっという間に巣立っていった感じ、とでもいうのかもしれない。オンエアを見ていてもなんだか懐かしいような気持ちすらする。

移動で車の運転をしている時に、最近よくPodcastを聴いている。私は耳からの情報入力と処理の能力が極めて低いので、ラジオや音声メディアに苦手意識があるのだが、運転中は意外とそれが気にならなくて、上出遼平くんのPodcastとか、小説家の朝井リョウさんと加藤千恵さんの「信頼できない語り手」とか、佐久間宣行さんのANNとか、知っている人の声だと友達の会話を隣の席で聞いているような感じがあって安心する。1人でニヤニヤしながら運転している私は傍からみたらさぞかし気持ち悪いだろう。
あまりに眠い時は「90年代の邦楽のヒット曲」をSiriに頼んで流してもらう。この指定の中には知らない曲が1曲もないどころか、どの曲も全部歌詞も見ずフルで歌えるから驚きだ。その曲がかかっていたドラマのことを思い出しながら、これもまた傍からみたら気持ち悪すぎるだろうが、本気の大声で歌いながら運転すると、全く眠気を感じずにあっという間に家にたどり着ける。「LA・LA・LA LOVE SONG」が流れれば南と瀬名を思い出す。「空も飛べるはず」が流れれば「白線流し」の踏切のシーンを思い出す。イントロを聴くだけで、一瞬でテレビの前で夢中で観ていたあの頃の自分に戻ってしまう。

音楽の力はすごいなあと毎回ドラマを作るたびに新鮮に思う。「銀河の一票」の音楽は坂東祐大さんが作ってくれているのだが、元々は坂東さんに作ってもらうつもりではなかったのだ。1話の脚本の打ち合わせをしていた去年の春頃、そういえば音楽どうしようかなと思い、ほぼ友人的なノリで坂東さんに「こんなドラマを作ろうと思っていて、こんな雰囲気の音楽をイメージしているんですけど、誰かいい人いますかね?」と連絡した。「なるほど〜、考えてみますね」と言ってくれた坂東さんとやり取りを重ねたものの、なかなかこれだ!という形にならず、どうしようかなあと悩み始めた頃、「もう僕がやるしかないと思うんですよね」と坂東さんが言ってくれた。坂東さんが相当厳しいスケジュールで動いていることもわかっていたので(だから最初から依頼しなかったのもある)迷ったが、結果お願いした。私も心のどこかで坂東さんにやってもらうしかないと思っていたのだと思う。坂東さんと言えば高校時代から「巨匠」と呼ばれていた、というエピソードが個人的に大好きなのだが、本当に本物の天才だと思っている。平成前半のフジテレビドラマみたいな、景気のいい、楽しい音楽にしてほしい、という極めて雑で乱暴な私のお願いを聞いて作ってくれた坂東さんの音楽に、今回も大きな力をもらった。主題歌についてもちょっとした坂東さんとの物語があるので、次の制作日誌にて。


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