──── 地下鉄の階段を上って徒歩1分。車や人が行き交う六本木通りに、その店はある。
「文化を喫する」の意味を持つ本屋 ──「文喫(ぶんきつ)」。
2018年、サブスクリプション、ストリーミングサービスなど、文化や芸術と人との出会い方が大きく変容した時代に、文喫は入場料制の「本と出会うための本屋」として誕生した。
棚に並ぶのは、人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで、トレンドや売れ筋にとらわれることなく、書店員がこだわり抜いてセレクトした約三万冊の書籍たち。一人で本と向き合うための閲覧室や複数人で利用できる研究室、小腹を満たすことができる喫茶室も併設している。著者や知識人を招いた、ユニークな切り口で知的好奇心をくすぐるイベントは不定期で開かれる。書店員たちのバックヤードトークを番組にしたポッドキャストも人気だ。
文喫は、本と出会うための本屋。偶然の出会い、一目惚れの瞬間、深みにはまる本との関係。きっと本のことが好きになる。
そんな思いで文喫をつくるひとびとが、それぞれに辿る「おいしい記憶」とは。