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ÖVERSIKT/あらすじ1

食事を空想するプロジェクト

ÖVERSIKT/あらすじ1

山野アンダーソン陽子

ガラス作家

山野アンダーソン陽子


「空想の食事会」を考えた時、ある程度のあらすじを想定することでより深く空想を楽しめるのではないかと思い、例えば誰かの誕生日の食事会を空想してみることにした。

スカンジナビアでは、誕生日の当日はサプライズでその誕生日を迎える人をケーキとろうそく、歌で起こすと言う習慣がある。当日の朝は、そのケーキを食べる以外は基本的にいつもの生活をするのだけど、その後、誕生日の当人が誕生日会を開催するのが主流だ。簡単な食事会からお茶会など祝い方はその年によって人それぞれ。先月も同僚の34歳の誕生日だったので、仕事の合間に近くのピザ屋までみんなで歩いて行ってランチにピザをご馳走になった。夕飯は家族と親しい友人で彼のお気に入りのレストランに行くと言っていた。

私の誕生日は、スウェーデンの祝日の次の日なので、毎年その祝日に庭でBBQをする。コロナ明けから毎年恒例になって5年。友人との近況報告会と夏休みの過ごし方を共有する会のようなもので、来られる人たちが来る、という何とも緩い会にしている。10-15人ぐらいでそんなに大人数ではないけれど、友人同士は1年に1回、この会でしか会わない人たちもいるらしい。夏休みの前に冷凍庫の掃除も兼ねて義父の作った大角鹿のソーセージや冷蔵庫に残っている野菜などを焼く。古くからの友人が毎年レモンパイを作ってくれるので、私も何か適当にケーキを作る。去年は初めてコーヒーゼリーケーキを作った。毎年、1週間前から野外で過ごせるか天気予報をチェックし、何となくの献立を決める。去年はギリギリ雨に降られなかったけど、ちょっと寒かったので野菜スープも作った。そして、その次の日の「誕生日当日」が平日ならば、朝から自分のためだけに食べたいご飯を作り、聞きたい音楽を聴き、ほろ酔いで展覧会を観に行ったり、のんびりと仕事をしないで過ごすことにしている。

けれども、30歳、40歳、50歳・・と10年ごとの節目には事情が変わる。その10年ごとの節目が近づくと「再来年の誕生日会は盛大にするの?」と「来年の誕生日」をすっぽかして質問されることがあるくらい、節目の誕生日の前年、もしくはその2〜3年前から大きな誕生日会のためにどんなことをしようか考えている人もいる。大きな誕生日会をしなくても、節目として自分を見つめる機会を作る人も多い。どうやら誕生日会とは、人に感謝をする機会であり、自分を元気付ける機会でもあるらしい。

実は私も、28歳になって友人たちに「30歳の誕生日会はどんなことをするか決めているの?」と何度も聞かれるうちに、何かしなくては!何かしたい!と思うようになった。そこで、南アフリカのケープタウンのワイナリーで30歳の誕生日会をしようと企んで、少しづつお金も貯め、下調べを進めていた。聞けば、南アフリカとスウェーデンには夏は時差もなく、私の友人が多く住むスカンジナビアから行きやすいとのこと。日本からは行きにくいけど、2年も前から伝えたらどうにかしてくれるだろうと、非現実的な思考でまだ見ぬアフリカの地に期待を膨らませていた。けれど、実際は日本の食器の会社に就職がが決まり、日本で30歳を盛大に祝う環境下に無いままそんなことはすっかり忘れて仕事に打ち込んでいた。15年以上だった今でもスウェーデンの友人に「30歳の誕生会はケープタウンで開催するって言ってたよね。」と言われることもあり、その思い出が私の30歳の誕生日会になっている。

スウェーデンの大学のクラスメイトの一人にコロンビアから養子になった友人がいた。ある時、彼に誕生日を尋ねると「大体の日にちしか分からないんだよ」と言われた。詳しく聞くと、生後間もなくして道で発見されたらしく、出生日は概ねその2~3日前だろうと推測されたらしい。彼のパスポートなどの正式な書類には発見された日が彼の誕生日ということで記載されているそうだ。そんな彼は、自分への30歳の誕生日プレゼントとして自分の出生地を尋ねた。正確な誕生日よりも誕生日を気にできる気持ちが大切であり、平和なのだと教えてもらえた。

Graphic Design:Tomoko Yamashita

Project

食事を空想するプロジェクト

山野アンダーソン陽子

ガラス作家

山野アンダーソン陽子

「空想の食事会計画」を通じて、おいしさの可能性をたのしく妄想していきます。

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