オイシサノトビラ
詩と余白の扉
オイシサノトビラ
詩は、日常から、想像の世界へ私たちを連れ出してくれる。
詩人・菅原敏さんは、言葉でその扉を拓く人だ。
彼の原点は、ひとつの問いにある。
「もしも詩が水だったなら、どんな器に注ぐことができるか」
紙の上だけではなく、朗読や音楽、アート、建築、香り、そして街へ。
詩を連れ出し、つながり、手渡していく。
2011 年、アメリカの出版社から、現代美術家・伊藤存氏との共作『裸でベランダ/ウサギと女たち』を発表した。刺繍と詩が響き合う「逆輸入」のデビューは、詩が五感に届く表現になり得ることを示した。その後も、媒体の境界を越えて歩みを続ける。
コロナ禍の J-WAVE では、一日の終わりに一編を朗読し、閉塞感のあった世界にそっと灯りを点した。アーティスト Superfly への歌詞提供、蒸留所とつくった「燃やすとレモンの香りがする詩集」。
詩は形を変えながら、誰かの中へ注がれていく。
活動の場は、国境も越えてきた。
アメリカ、ロシア、ポーランドなどで朗読を行い、言葉の響きそのものを手渡してきた。近年では、『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』や、旅と喫茶をテーマにした『珈琲夜船』を刊行。一冊の本だけを紹介する森岡書店で、「一編の朗読を売る店『菅原朗読店』」を開催した。はじめての連載が食をテーマに始まったことを機に、食卓の手触りや産地の記憶を詩に写してきた。
菅原さんの作品の軸は、いつも「届ける」にある。
書く、朗読する、香りをつける、音楽にのせる、旅に持ち出す。
方法が変われば、届き方も変わる。
場所が変われば、言葉の温度も変わる。
詩を通じて一人ひとりを想像の世界に連れ出してくれる。
オイシサノトビラの連載の扉名は「詩と余白の扉」。
余白は、菅原さんが届ける言葉だけでなく、読者が想像を注ぎ込むための器でもあるのだと思う。
菅原さんの言葉を通じて、あなた自身の「おいしさ」を見つけてください。

連載
オイシサノトビラの扉
オイシサノトビラ
「おいしさって、なんだろう?」をテーマに、その人の生きる素となるような食事との出合いやきっかけをつくることを目指しています。