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鉄板で作る、お好み焼き(広島風)

自然と、道具

鉄板で作る、お好み焼き(広島風)

竹下充

プロデューサー

竹下充

お好み焼きには、少々こだわりがあります。と言うのも、私は広島生まれ・広島育ち。「お好み焼きを“広島焼き”とは言わせない!!」────そんな人生を歩んできたので、お好み焼きに関してはつい熱が入ってしまいます。冗談半分ですが、親しい人から「広島焼き」と聞くとつい、「それはお好み焼きじゃけぇ。強いて言えば広島風お好み焼きで、“広島焼き”って料理は存在せんけーねぇー(広島弁)」と伝えたりしています。ただ、広島を離れて20年以上経つ今では、時には長いものに巻かれつつ、“広島焼き”という呼び方も受け入れたりしています。

余談ですが、広島のライブハウスの楽屋には、県外から来たアーティスト向けにこんな張り紙が貼ってあるそうです。
《MCにおける注意事項。広島風お好み焼きのことを“広島焼き”というと微妙な空気になり、「広島焼きなんてものはない」という返しをされますので絶対におやめください。これに留まらず、後日SNSなどで“広島焼きと言ったアーティスト”として噂が広まり、最悪の場合、広島人を中心に炎上します。嘘か本当かは、ぜひステージ上でお確かめください》

ちょっとしたジョークなのでしょうが、あながち間違ってもいないと思っています。それほど、お好み焼きという言葉に対して広島人は小さなこだわりを持っているのです。

そんなソウルフードのお好み焼きということもあって、自宅でもよく作ります。実は味にもそこそこ自信があり、友人を家に招いたときは、ちょくちょく振る舞わせてもらっています。ついに道具にもこだわり始めて、これまではホットプレートで焼いていたのですが、ここ数年は鉄板を使っています。横幅約60cm、奥行き約30cm、厚みも5mm以上の特大鉄板を三つ口ガスコンロにドンと置いて、即席の“お好み焼き専用鉄板キッチン”を使うようになって、味のクオリティも上がりました。やっぱり道具に頼るのは重要ですね。

一般的には鉄板を家庭の調理道具として使う人は多くないかもしれませんが、実はアウトドア界隈では「分厚い鉄板で焼くと、肉でも野菜でもとにかく旨い」という理由から、数年前から人気が急上昇し、各ブランドが大小さまざまな鉄板を開発・発売しています。私もその“アウトドア鉄板ムーブメント”に乗ろうと思い、「どうせなら大きいほうが便利だろう」と、この特大鉄板を購入しました。購入時は、焚き火を前に豪快な鉄板料理を作る自分の姿を想像していたのですが……。

この鉄板、サイズゆえに重量もまさにヘビー級。自宅からアウトドアへ持ち出すことをつい躊躇してしまい、実はまだ一度も外で使ったことがありません。その代わり、家での鉄板料理には大活躍しています。お好み焼きはもちろん、ホットケーキ、焼き肉、タコスなどにも重宝しており、いまや“家庭用鉄板”としてすっかりその地位を確立しています。しかし、本音を言えば、お好み焼き屋にあるような“鉄板付きテーブル”を自宅のリビングに設置するのが夢なのですが、あまりにも使用頻度が少なく、明らかな無駄である上に、そもそも置くスペースもありません。宝くじでも当たらない限り、その夢が叶うことはなさそうです……。

わたしの素

アウトドアで人気の料理道具といえば、鉄板よりもメジャーなのがスキレットでしょうか。100円均一ショップでも“100スキ”として販売されているので、手に入りやすいのも魅力です。その小型スキレットを活用したレシピは世の中に数多くありますが、最近私が出会った衝撃レシピが、うずらの卵を殻ごと焼く——という、焼くというより“炒る”に近い調理法でした。

よく洗ったうずらの卵をそのままスキレットに入れ、醤油・みりん・砂糖のいわゆる甘辛系で味付けするだけ。以上です。
できるだけ手間をかけずにおいしいものを作るスキルが必要になるキャンプ料理には、まさにうってつけ。

今までの自分の常識では「殻=マズい」。少しでも殻が残っていたら血眼になって探して取り除くものだと思っていたので、「本当にそんなの食べられるの?」と半信半疑で作ってみました。

ところが、パリパリとした食感が意外と良く、何より“抜群にカルシウムを摂取している気分”になれるのが、酒飲みで不摂生な自分にはピッタリ。おかげで、自分の“殻”を一つ破らせてもらいました。

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自然と、道具の扉

竹下充

プロデューサー

竹下充

自然が大好きで自然と道具でとことん遊んできた竹下さんと仲間たちの素となった食事。

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